インプラント
インプラントと歯の移植(自家歯牙移植)の違い
虫歯や歯周病、不慮の事故などで、残念ながら歯を失ってしまうことがあります。歯が抜けてしまった箇所を専門用語では欠損歯(けっそんし)と呼びます。
欠損歯を治療する方法は、主にブリッジ、入れ歯、インプラントの3つです。中でも、自分の歯と同じような感覚で噛める治療法としては、歯を失ってしまった…そんな時の治療法はインプラントが候補にのコラムでもお伝えした、インプラントがよく選ばれています。
また、インプラントについては、提携医院であるインプラントオフィス大通のサイトやインプラントコラムでもお伝えしておりますので、興味のある方は、併せてご参照ください。
ただ、こういったよく耳にする治療法に加えて歯の移植という選択肢があることをご存じでしょうか?インプラントは聞いたことがあっても、歯の移植については、どんな治療法なのかよく分からないという方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、あまり聞き慣れない歯の移植について、インプラントとの違いや特徴をご紹介します。
インプラントと歯の移植それぞれの特徴
まず、インプラントと歯の移植について押さえておきましょう。
人工歯根でしっかりと固定するインプラント治療
インプラント治療とは、歯を失った部分の顎の骨にフィクスチャーと呼ばれる人工歯根を埋め込み、その上に上部構造となる人工歯を装着し、噛み合わせや見た目を回復する治療法です。
自分の歯を有効活用する歯の移植
歯の移植とは、その名のとおり、自分の歯を別の場所に移植する治療法です。専門的には自家歯牙移植(じかしがいしょく)といいます。歯の移植では、主に親知らずなど、噛み合わせにあまり影響しない歯を抜歯し、歯を失った部分に移植します。
移植にはドナーとなる歯が必要
このように歯の移植に使う歯をドナーといいます。ただ、どの歯でもドナーに使えるわけではありません。ドナーとなる歯は、以下の条件を満たす必要があります。
- 歯根部分に虫歯がない
- 歯周病にかかっていない
- (嚙み合わせなど)大切な機能を担う歯ではない
- 見た目に影響しない
これらの条件を満たす歯として選ばれるのが親知らずです。親知らずは、一番奥に生えるため、他の歯に比べて噛み合わせへの影響が少なく、抜歯しても見た目に影響が出にくいという特徴があります。親知らず以外の歯を移植に使うことはほとんどありません。
インプラントと歯の移植の違い
それではインプラントと歯の移植の違いについて、ポイントを分けて具体的に解説していきましょう。
骨と結合するしくみ
インプラントと歯の移植では、骨と結合するしくみが違います。インプラントはチタンという金属で作られています。チタンは骨と直接結合するオッセオインテグレーションという性質を持っており、これによってインプラントは顎の骨と強固に結合し、安定して噛めるようになるのです。
一方、天然歯は骨と直接結合しているわけではありません。歯根膜(しこんまく)という薄い膜状の組織を介して結合しています。
歯の移植の場合、移植するために抜歯した歯は、天然歯ですから歯根膜があります。そのため、移植した歯も歯根膜を介して骨と結合します。ただし、繊細な歯根膜を傷つけずに移植するのは簡単ではありません。歯根膜を極力傷つけないようにドナー歯は優しく、丁寧に抜歯する必要があります。
適応部位
インプラントは、様々なサイズや形状のものが開発されているので、インプラントは前歯、奥歯に関わらず、ほとんどの部位に適用できます。
一方、歯の移植では、ドナーの歯として親知らずが選ばれます。そのため、移植先となるのは、近くにある大臼歯(前から6番目や7番目の歯)になります。より前方にある小臼歯や前歯が移植先として選ばれることはありません。
保険診療の取り扱い
インプラント治療は、原則として自由診療となり、治療費は全額自己負担です。ただし、事故などで広範囲にわたって歯と顎の骨を失った場合など、ごく稀に保険が適用されるケースもあります。とはいえ、その条件は非常に厳しく、対象となる方はごくわずかです。
一方、歯の移植は、特定の条件を満たせば保険診療の対象となります。たとえば、虫歯などが原因で保存不可能な歯を抜歯し、その同日に親知らずを抜歯して移植する場合は保険が適用されます。
3割負担の方であれば、抜歯と移植を合わせて1万円程度で受けられるでしょう。ただし、抜歯した日より後に移植を行う場合は、保険適用外となるため注意が必要です。
噛み合わせ
天然の歯には歯根膜がありますが、骨と直接結合するインプラントには歯根膜がありません。歯根膜には、噛み合わせる際のクッションのような役割のほか、噛む力を感知したり、噛み心地を感じ取るという役割があります。
インプラントはしっかり噛めるのですが、歯根膜がないので、その点は天然歯と異なる噛み心地になります。一方、移植した歯には歯根膜があるため、他の普通の歯と同じような噛み合わせと噛み心地が得られます。
ドナーの必要性
インプラントは人工の歯を使用するため、ドナーとなる歯は必要ありません。親知らずがない方や、他の歯を失いたくない方でも、インプラントのサイズさえ合えば、どの部位にも治療が可能です。
一方、冒頭でもお伝えしたように、歯の移植はドナーとなる歯が欠かせません。欠損歯の箇所に歯を移植したくても、ドナーとして適した歯がなければ、移植という処置そのものが行えません。
生存率
治療から10年経過した時にどれくらい残っているかどうか(10年生存率)を比べてみると、インプラントは90%以上と報告されています。メンテナンスを続けることで長持ちさせることも可能です。
一方、歯の移植の場合は、50~70%と報告されています。インプラントには及びませんが、他の治療法と比較しても、良好な成績と言えるでしょう。
欠損歯のお悩みもポラリス歯科・矯正歯科にご相談を
今回は、歯を失った際の治療法であるインプラントと、歯の移植の違いについて解説してきました。どちらも失われた歯の機能を取り戻すための有効な治療法ですが、骨との結合の仕方、適応できる部位、保険適用の有無、噛んだ時の感覚など、様々な点で違いがあります。
そのため、どちらの治療法が優れていると一概に言えるものではなく、それぞれのメリット・デメリット、患者さんご自身の口腔内の状態、費用面などを総合的に考慮したうで、治療法を選ぶことが大切です。
ポラリス歯科・矯正歯科は、医療法人社団 千仁会の専門医が、患者さん一人一人の歯や口腔内の状態をしっかりと見極めたうえで、最適な治療法をご提案いたします。欠損歯についても、どのような治療が自分に合っているのか分からない方や、それぞれの治療法について、もっと詳しく知りたいとお考えの方も、ぜひ一度、札幌駅北口すぐのポラリス歯科・矯正歯科へご相談ください。