歯やお口の健康を守るための食生活

歯やお口の健康を守るための食生活
 

予防歯科というと、歯周病予防や、フッ素や歯磨きで虫歯を予防することをイメージする方がほとんどではないでしょうか。

 

確かに、フッ素や歯磨きは予防歯科の基本と言ってもいいくらい大切なのですが、それに負けないくらい、予防歯科では食生活や食習慣も重視されています。

 

今回は、歯やお口の健康を守るための食生活や食習慣のポイントについてお話しします。

予防歯科での食育

皆さんは「食育」という言葉を聞いたことがありますか?食育とは「食事の摂り方についての教育」という意味です。予防歯科における食育のポイントは様々ですが、主に

  1. 規則正しい食生活を送ること
  2. しっかりとよく噛むこと
  3. 虫歯になりにくい食べ方を心がけること

この3つが挙げられます。

規則正しい食生活の大切さ

規則正しい食生活の大切さ
 

多くの方は1日3回食事をしていると思います。もし、80歳まで1日3回食事を続けると、食事の総回数はなんと87,600回にもなる計算です。これほど繰り返す食事ですから、規則正しく続けることが、歯の健康を保つ上ではとても大切になります。

食べるたびに起こるお口の変化

まず、食事をした際、お口の中でどのような変化が起きるのかをご説明しましょう。

 

食事をすると、食べ物や飲み物を栄養源にして、私たちのお口の中で細菌の活動が増えます。歯の健康に直接関係するのが、ミュータンス菌などの虫歯菌と呼ばれる細菌たちです。

 

虫歯菌は、食べ物や飲み物に含まれる糖質を栄養にして乳酸という酸を作ります。このため、食事をしてから数分後には、お口のpH(ペーハー、ピーエイチ)が中性から一気に酸性に傾いてしまいます。

 

お口の中の環境が酸性に傾いている間、歯の表面からミネラル成分が少しずつ溶け出していきます。しばらくすると、唾液の働きにより酸性が中和され、再び中性に戻ります。

 

同時に、歯の表面から溶け出したミネラル成分が、唾液の働きによって歯に戻され、歯が修復されます。食事のたびにこの変化がずっと繰り返されています。

食生活の違いによる口内環境の差

1日3回規則正しく食事をしていると、食事のたびにpHは下がり、酸性に傾きますが、その後pHの中和と歯の修復が時間をかけてしっかりと行われます。このため、歯が虫歯になりにくい状態を保ってくれます。

 

しかし、1日3回の食事の間に間食をたびたび繰り返すような食生活を送ってしまうと、間食のたびに戻りかけたpHが再び下がりますので、お口の中が長時間にわたり酸性に傾いてしまいます。

 

この間、歯の表面からミネラル成分が溶け出し続けます。唾液の働きで修復しようとするところから、どんどん溶け出すので修復が間に合いません。このような状態ですと、虫歯になりやすくなってしまうのです。

噛むことの大切さ

噛むことの大切さ
 

食事の際には「しっかり噛んで食べましょう」とよく言いますね。しっかり噛むことは、医学的にもちゃんとしたメリットがあり、歯やお口の健康を守ることにつながるのです。以下でご説明しましょう。

唾液がたくさん出る

食べる時の刺激は、唾液を作り出す元にあたる唾液腺の働きを活発化させます。すると、唾液がたくさん作り出されます。

 

唾液がたくさん出ると、pHの中和作用や歯の修復作用などもしっかり行われますので、歯の健康を保つことにつながります。

歯の汚れ防止

唾液には、お口の汚れを洗い流す洗浄作用や、お口の細菌の活動を抑える抗菌作用もあります。しっかり噛むと唾液がたくさん出て、食事の後のお口や歯の汚れを洗い流してくれます。

 

また、歯の表面につく歯垢(しこう)という名称で知られるプラークは細菌の塊です。唾液がたくさん出ると、抗菌作用でプラークがつきにくくなります。

筋肉が衰えない

食べるためには、顎を動かし、上下の歯をしっかりと噛み合わせなければなりません。しっかり噛んで食べると、顎を動かす筋肉を多く使いますので、顎の筋肉の衰えが予防され、噛む力を保つことができます。

顎の骨格の成長促進

下顎骨,下顎頭,上顎骨
 

顎の骨格は、下顎骨(かがくこつ)の頂点である下顎頭(かがくとう)という部分の成長発育がきっかけとなって進んでいきます。

 

そして、下顎骨の成長に合わせるように上顎骨(じょうがくこつ)が成長します。しっかり噛むと、その刺激が下顎頭に伝わり、さらに成長を促してくれます。

 

つまり、しっかり噛んで食べるということは、下顎骨、そして上顎骨の成長発育にも効果があり、顎の骨格を形作る手助けになるのです。

消化を助ける

しっかり噛むと、食べ物が小さくなるだけでなく、唾液の中に含まれているアミラーゼなどの消化酵素が食べ物にきちんと混ざります。

 

このため、しっかり噛むと食べ物を消化しやすくなり、胃腸の負担をやわらげ、消化吸収を促進してくれるのです。

脳への刺激

お口の中は、髪の毛が入ってもわかるほどに敏感です。しっかり噛んで食べると、とても多くの情報が脳に伝わりますので、脳の血液量が増え、認知機能や記憶力が高まります。

 

子供の場合は脳の成長発育が促されますし、成人の場合は、認知症などの脳機能の衰えを防止する効果が見込めます。

…逆に噛まないで食べると

では逆にしっかり噛まず、飲み込むようにして食べるとどうなるのでしょうか?これには多くのデメリットがあります。

 

まず、唾液の分泌量が減少しますから、pHの中和や歯の修復がされにくくなり、虫歯になりやすくなります。同時に歯周病菌の活動も抑えられなくなるので、歯周病のリスクも高まり、歯を失う可能性が増えてしまいます。

 

また、食物はしっかり噛まないと消化しやすい形にならないため、胃腸の負担が増し、栄養も吸収されにくくなります。

 

さらに顎の筋肉をあまり使わないことで、顎の筋肉が衰え、噛む力が低下します。子供の場合は、顎の骨格の成長発育も不十分になってしまいます。

虫歯になりにくい食べ方

虫歯になりにくい食べ方
 

甘いものを食べると虫歯になるとよく言われますね。この理由は冒頭でもお話ししたように、甘いもの、つまり糖を栄養源にして虫歯の原因菌が活動し、乳酸という酸を作り出して歯が溶かされるからです。

 

だからと言って、甘いものを一切食べてはいけないとは言いません。虫歯菌が好きな甘いものは、私たち人間だって好きですから、ケーキやお菓子、アイスクリームのような甘いものを、完全に断つのは難しい話でしょう。

 

ただ、甘いものの食べ方については工夫をしていただければと思います。甘いものを食べる回数をなるべく減らし、食べる量も控えめにするよう心掛けてみてください。

 

間食の回数が減れば、唾液のpHの回復時間と歯の修復時間が長くなり、甘いものを食べても歯がダメージを受けにくくなるからです。

食生活も含め、歯の健康を総合的に考える

今回は、歯やお口の健康を守る食生活のポイントについてお話ししました。虫歯や歯周病を防ぎ、歯やお口の健康を守るためには、日頃の食生活や食習慣も重要です。

 

ポラリス歯科・矯正歯科では、一般的な治療だけでなく、食事面も含め、総合的な歯の健康維持を重視しています。それは日々のQOL向上にもつながる大切なアプローチだからです。予防歯科にご興味のある方は、ポラリス歯科・矯正歯科にぜひお問い合わせください。