歯周病
歯槽膿漏(しそうのうろう)って何?
皆さんは、歯槽膿漏(しそうのうろう)という言葉をご存知ですか?
テレビCMなどで「歯槽膿漏で歯ぐきが…」「○○で歯槽膿漏予防!」という宣伝文句を聞いたことがあるかもしれませんね。また、歯磨き粉のパッケージなどでも歯槽膿漏という単語が印刷されているものがあります。
今回はそんな歯槽膿漏とは一体何なのか、その原因と治療法などについてお話しします。
歯槽膿漏と歯周病
歯槽膿漏という呼び方
実は、今ではあまり歯槽膿漏という言い方をしないのです。10年以上前は歯槽膿漏という呼び方が広まりましたが、現在は歯周病と呼ばれています。
歯周病の段階にもいくつかあり、歯周病の最も重症な状態が歯槽膿漏と呼ばれていたものになります。当時は、歯周病の予防喚起のために歯槽膿漏という言葉が使われ、大変メジャーになりました。
歯周病の怖さ
歯周病とは、多くの人が経験する一般的な口腔内の病気であり、歯が揺れる(グラグラする)原因の一つとして知られています。
歯科での治療というと、虫歯の治療を想起される方が多いかもしれません。しかし、2018年の厚生労働省のデータからも分かりますが、恐ろしいことに、歯を失う原因の割合で一番多いのは、虫歯ではなく歯周病なのです。
上記の厚労省のデータを見ると、実に歯を失う理由の4割近くが歯周病です(虫歯は約3割)。そして、放っておくと全身疾患も?歯周病について詳しく解説のコラムでもお話ししましたが、日本人の20歳以上の方の6割以上が歯周病にかかっていると言われます。
正しく、歯周病治療のページでお伝えしているように、もはや歯周病は国民病と言っても過言ではない状況なのです。
歯周病とは何か?
これまでもポラリス歯科・矯正歯科では、歯周病について様々なコラムで解説してきましたが、もう一度おさらいしておきましょう。
歯周病が起こる仕組み
歯周病は、歯を支える歯ぐきや骨に炎症を引き起こす慢性的な疾患です。歯周病は、ジンジバリス菌などの細菌の感染によって引き起こされ、歯垢(プラーク)や歯石が、歯周ポケットと呼ばれる歯と歯ぐきとの間に溜まることで症状が悪化します。
歯肉炎から歯周炎へ
歯周病には、歯肉炎と歯周炎という、主に二つの状態があります。歯肉炎は歯周病の初期の段階で、歯ぐきの腫れや出血を引き起こします。いわゆる、ただ歯ぐきが腫れているという状態です。
歯肉炎が進行すると歯周炎となり、歯ぐきの炎症が進行して歯槽骨(しそうこつ:歯を支える骨)に悪影響を与えます。この結果、歯がグラグラしたり、最悪の場合は歯が抜け落ちることになります。
歯肉炎と歯周炎については、歯肉炎と歯周炎って何が違うの?のコラムで詳しく解説していますので、併せてご参照ください。
歯周病による歯の揺れ、グラつき
歯周病による歯の揺れの主な原因は、上でも述べた歯を支える骨への悪影響です。歯周病菌の感染による炎症が進むと、歯槽骨が破壊され、歯が本来の位置にしっかりと固定されなくなります。
これにより、歯がグラグラしてきてしまい、この状態をかつては歯槽膿漏と呼んでいたわけです。そのため、歯が揺れているということは、歯周病の中でも相当進行している状態です。さらに炎症によって、噛む際の痛みや不快感を覚えるようにもなります。
また、歯周炎によって歯の表面に付着した歯石や歯垢が増加し、歯と歯ぐきの間にできる歯周ポケットも、歯の揺れを引き起こす要因となります。歯周ポケットが深くなると、さらに細菌が繁殖し、炎症を悪化させ、歯槽骨や歯周組織の破壊が進んでしまいます。
歯周病による歯の揺れ、歯のグラつきの治療
歯周病による歯の揺れ、歯がグラグラする症状を治すには、歯科医院で歯科医師による診断と治療が必要です。
歯周病の初期治療
歯周病の初期段階では、歯に付着した汚れの除去が最優先になります。歯科医院では、歯石や歯垢を取り除くために、専用機材によるスケーリングや歯石除去を行います。これをPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)と呼びます。
また、患部の清掃や歯ぐきの状態を改善するための指導も同時に行っていきます。これにより、炎症を抑え、歯周病の進行を遅らせることができるようになります。
抗生物質や抗菌薬の使用
急激に進行した歯周病を一時的に抑えるために、歯科医院では抗生物質や抗菌薬を処方することがあります。薬によって急性期の炎症を鎮め、細菌の繁殖が抑えられて腫れや痛みが引けば、汚れの除去を行うことができます。
歯周組織再生療法
歯周病による歯の揺れやグラつきが進行してしまった場合、歯周組織再生療法が行われることがあります。歯周組織再生療法では、すでに進行してしまった歯周ポケットの洗浄や、再生を促進するための手術や各種処置を行います。
歯周組織の再生にはエムドゲインやリグロスという薬剤が用いられ、また、骨の再生を促進する薬剤(バイオオス、バイオガイド等)が使用されるケースもあります。
歯の固定
すでにグラグラしてしまっている歯には、歯の揺れを軽減するために、歯を固定する補綴治療(ほてつちりょう:詰め物や被せ物などで歯を失った箇所を補う治療)を行うことがあります。
これには、暫間固定(ざんかんこてい)と呼ばれる一時的な固定から、ブリッジやインプラントなど、永久的に固定する方法まで、患者さんの状態に合わせた治療法が選ばれます。歯をしっかり固定して噛む力を分散させ、歯ぐきや歯槽骨など、歯周組織にかかる負担を軽減するのが狙いです。
定期的な歯科検診
歯周病による歯の揺れを治療した後、大切なのはフォローアップと予防です。適切な歯磨きやフロスによる歯間清掃を継続し、定期的な歯科検診を受けることで、再発を防ぐことができます。
歯槽膿漏(歯周病)をしっかり予防して、いつまでも健康な口腔環境を
今回は、かつて歯槽膿漏とも呼ばれた歯周病について解説しました。冒頭でも触れたように、実に多くの日本人が歯周病にかかっており、放置すれば歯を失うことにつながってしまいます。
歯周病によるリスクをなるべく最小限に抑えるためには、日頃の適切な歯磨きを基本にした、ご自身で行うセルフケアと、歯科医院で行うプロフェッショナルケアを併用することがポイントです。どちらが欠けてもいけません。
歯科医院には、歯科医師や衛生士などの専門家がいます。歯周病に対する正しい理解と予防法を身につけることが、いつまでも健康な口腔環境を維持し、自分の歯を守るための第一歩になります。
もし歯周病に関する疑問や不安がある場合は、放っておいたりせず、ポラリス歯科・矯正歯科にお気軽にご相談ください。医療法人社団 千仁会の専門医が、患者さん一人一人に最適な治療とアドバイスをご提供いたします。