根管治療
歯髄炎とは?
皆さんは歯髄炎(しずいえん)という病名を聞いたことがありますか?歯髄炎は、歯の神経に炎症が起きる病気で、強い痛みやしみるような感覚を引き起こします。
冷たいものや温かいものがしみたり、何もしていなくてもズキズキと痛む場合は、歯髄炎の可能性があります。放置すると激しい痛みや歯の喪失につながることもあるので、注意が必要です。
今回は、そんな歯髄炎の原因や症状、治療法についてご紹介します。
歯髄とは
歯髄とは、神経や血管、様々な細胞からなる歯の神経のことです。これらは、歯の中心部にある歯髄腔(しずいくう)という空間の中にあります。また、歯の根の先端には根尖(こんせん)と呼ばれる小さな穴が空いていて、この穴から神経や血管が歯髄腔に入り込んでいます。
歯髄には以下の役割があります。
- 象牙質を形成する
- 栄養を供給する
- 外部からの刺激から歯を守る
- 歯の感覚を伝える
象牙質とは、歯の構成要素の大部分を占める部分です。歯髄には歯の成長を促進する細胞が含まれており、歯に栄養や酸素を供給したり、神経を通じて、熱いものや冷たいものを感知する役割もあります。
このように、歯髄は、歯が機能していくためにとても大切な働きを担っているのです。
歯髄炎とは
今回のテーマである歯髄炎とは、外からの刺激に対して歯髄に起こる炎症のことをいいます。歯髄炎になると激しい痛みを感じたり、冷たいものや温かいものがしみたりするようになり、日常生活に影響が出てきます。
また、炎症が強いほど現れる症状も強くなり、放置すると耐えがたい痛みになることもあります。さらに進行すると歯髄の機能が低下し、最終的には歯髄が壊死してしまう可能性もありますので、放置してはいけません。
歯髄炎の原因
そんな歯髄炎の原因ですが、主に以下のようなもの挙げられます。
虫歯
虫歯が進行して歯髄に近くなると、虫歯菌の出す毒素が歯髄を刺激し、炎症反応を引き起こします。
また、虫歯によって歯が溶けてしまうと、歯髄が外気に触れる状態になり、冷たい風や熱い食べ物、歯磨き粉などの刺激を、歯髄が直接受けるようになります。これにより、歯髄に炎症ができ、痛みを感じるようになってきます。
隣の歯に存在する大きな根尖病巣
歯の根尖に膿が溜まってしまう状態を根尖病巣(こんせんびょうそう)といいます。隣接する歯に根尖病巣があり、それが拡大して根尖から細菌が侵入すると、歯髄炎を引き起こします。
打撲や歯ぎしり、歯の破折
打撲や歯ぎしりによって歯に衝撃が加わると、歯髄を守るために炎症を起こすことがあります。厄介なのは、歯の外見からはこの炎症が見えないことです。そのため、歯科医院でレントゲンや歯を軽く叩くなどの検査を行い、本当に歯髄炎なのかを診断しなければなりません。
また、打撲に関しては、ぶつけてから数十年経って歯髄が炎症を起こし、神経が死んでしまうこともあり、長期間の経過観察が必要です。
この他にも、転倒や事故などで歯が折れ、歯髄がむき出しになると歯髄炎が起きます。
象牙質知覚過敏症
冷たいものや熱いものを口にしたとき、歯がしみる症状のことを象牙質知覚過敏症と言います。知覚過敏の症状が強いと、歯髄炎が起こることがあります。
詰め物や薬品の刺激
虫歯治療で使われるコンポジットレジンと呼ばれる詰め物や、詰め物・被せ物を装着する際に使用する接着剤(セメント)の刺激で歯髄炎が起きることがあります。
深い歯周ポケット
歯周ポケットとは、歯と歯茎の境目にある溝のことです。歯周病が進行したり、一部分だけ強く噛み合わせが当たっていると、歯周ポケットが深くなり、歯の根の先端に達することがあります。
すると、口の中の細菌が、歯周ポケットを通じて根尖から歯髄腔内に侵入し、歯髄炎を起こしてしまうのです。
原因が特定できないケース
ここまで紹介した原因以外にも、歯髄の加齢変化や、長年の嚙み合わせの習慣など、様々な刺激によって歯髄が少しずつダメージを受け、歯髄炎を発症することがあります。
特に、歯髄の中にカルシウムなどが沈着し、石灰化物ができると、歯髄が圧迫されて痛みが生じやすくなります。
歯髄炎の症状
歯髄炎の症状には大きく分けて急性症状と慢性症状の2つがあります。
急性症状
初期は冷たいもので一瞬の痛みを感じていたのが、炎症が進むにつれ、熱いものにも痛みを感じるようになります。
痛みはだんだんと強くなり、最終的には、何もしていなくてもズキズキと脈打つような激痛に襲われることがあります。
慢性症状
慢性歯髄炎では、ほとんど痛みを感じない場合もあります。ただ、虫歯の穴に食べ物が詰まった時などに、一瞬だけ鋭い痛みを感じることも出てきます。
これらの症状は、歯髄に対して弱い刺激が長期間続いたり、歯髄の防御反応が強い場合に見られます。
歯髄炎の治療方法
歯髄炎になってしまった場合、治療法としては、歯髄を残す方法と歯髄を除去する方法があります。
歯髄を残す方法
歯髄炎がごく初期の場合、歯髄を残せる可能性があります。具体的には、冷たいものがしみたり、少し痛みを感じたりするものの、その刺激がなくなれば、すぐに痛みが治まるといった状態です。
この段階では、歯髄の炎症を抑える薬を詰めたり、炎症を起こした部分だけを丁寧に取り除くことで、歯髄の神経の機能を維持できる可能性があります。
歯髄を除去する方法
ズキズキとした痛みが続いたり、何もしなくても強い痛みを感じたりする場合は、歯髄を全て取り除く、根管治療が必要になります。
歯髄は、他の組織と比べて血液の供給が少ないため、炎症が少し広がるだけで、あっという間に全体に広がってしまうのです。
歯髄を除去すると歯は栄養や感覚を失い、失活歯(しっかつし)となりますが、感染が広がるのを防ぎ、歯そのものを残すことができます。
根管治療については下記のコラムで詳しく解説しております。
歯髄炎を放置してしまうと…
歯髄炎の痛みを放置すると、その痛みは自然に消えていきます。しかし、それは治ったのではなく歯髄が壊死してしまったため、知覚が失われたからなのです。
炎症は、根尖から歯の根の周りにも広がっていきます。噛むたびに違和感を感じたり、歯茎が腫れたり赤くなったりするのも、炎症が広がっているサインです。
炎症の広がりが大きくなると、隣の歯へも影響を及ぼしたり、最悪抜歯になるケースもあるため、少しでも異変を感じたら、迷わず歯科医院を受診しましょう。
歯髄炎の治療もポラリス歯科・矯正歯科にご相談ください
今回お伝えしたように、歯髄炎は、放っておくと激しい痛みだけでなく、最悪の場合、歯を失ってしまうこともあります。
虫歯が歯髄に達する前に治療をすることがベストですが、歯髄を取り除いても、しっかりと治療をすれば、約90%の高い成功率で歯を残すことができます。
ポラリス歯科・矯正歯科は、医療法人社団 千仁会の専門医が在籍し、精度の高い根管治療を提供しています。今回のコラムを読んで、もしかして歯髄炎かも…と思ったら、一人で悩まず、まずはお気軽にご相談ください。