根管治療
ボーンキャビティーの問題点と治療法について
歯や顎の病気が、全身疾患の引き金になることがあります。その一つがボーンキャビティーです。ボーンキャビティーとは、骨(ボーン:Bone)の中の空洞(キャビティ:Cavity)のことを指します。空洞といっても空っぽではなく、コレステロールが変化した物質が詰まっています。
実は近年、このボーンキャビティーが慢性的な病気の引き金になっているのではないかと指摘されているのです。今回は、そんなボーンキャビティーの原因や対処法についてお話しします。
ボーンキャビティーは、FDOJ(Fatty Degenerative Osteonecrosis and Osteolysis of the Jawbone:脂質変性顎骨歯槽骨壊死)や、NICO(Neuralgia Inducing Cavitational Osteonecrosis) 、あるいは IO(Ischemic Osteonecrosis)などとも呼ばれます。少々分かりづらいので、今回はボーンキャビティーの表記で統一します。
ボーンキャビティーが生じる原因
ボーンキャビティーができる理由としては、次の2つが考えられています。
抜歯
虫歯が原因で根の先に膿が溜まったり、重度の歯周病で歯を抜く時は、歯根膜などの組織もしっかりと取り除くのが大切です。なぜなら、それらが骨の中に残ったままになると、健全な骨の再生ができなくなるからです。
歯根膜が残ってしまうと、周囲の骨は「歯根が存在する」と勘違いをして根を守ろうとします。そして、周囲を強力な繊維で包み、空洞を作ります。これがボーンキャビティーの原因となるのです。
感染した根管
虫歯が進行したことにより、治療によって神経を取り除いた歯もボーンキャビティーの原因になります。
汚染された神経をしっかりと除去することができれば良いのですが、根管(歯の根っこ)は複雑な形をしていることも多いため、除去しきれずに汚染された組織が残ってしまうことがあります。
すると、抜歯のくだりでも説明したように、骨の正常な再生が行われず、ボーンキャビティーを生じることがあるのです。さらにそこに細菌感染が起きると、様々な悪影響も出てきます。
根尖病巣
歯の神経を抜いた時に起こる病状の一つに根尖病巣(こんせんびょうそう)がありますが、根尖病巣とは、神経を抜いた根管の中で細菌が繁殖し、歯根の先端に膿が溜まって、炎症を起こしている状態のことを指します。
一般的に、虫歯が深くなると、歯髄を取り除いて根管治療を行いますが、その際は、歯に栄養や酸素などを送り届ける動脈や、歯の老廃物を受け取る静脈も取り除くことになります。
血管を取り除いてしまうと、血液によって運ばれる免疫細胞が歯の内部に行き届かなくなるので、根管内部が細菌の温床となり、さらに根管の中に収まりきれなくなった細菌が、歯の根の先(根尖)から出てくると、骨を溶かして膿だまりを作るようになってしまいます。これが根尖病巣です。
根尖病巣が生じると、その周りには炎症が起きるようになります。詳しくは後述しますが、この炎症が身体全体に影響を及ぼすことがあるのです。
ボーンキャビティーが全身疾患の原因に
ボーンキャビティーは生体にとっては異物です。人間の体内には、正常でないものが現れると、炎症反応を起こして正常に戻そうとする働きがあるため、ボーンキャビティーに対しても炎症反応が起こり、そこで炎症性物質が生み出されています。
このボーンキャビティーによる炎症性物質は、血液の流れに乗って全身に運ばれていき、結果的に心臓疾患、アレルギー疾患、リウマチ、喘息、自己免疫疾患など様々な全身の病気を起こすきっかけ、もしくは悪化させる要因にもなると考えられているのです。
このように、歯が細菌や毒素に感染したことがきっかけとなり、全身的な病状が生じることを、専門的には歯性病巣感染(しせいびょうそうかんせん)といいます。
ボーンキャビティーは発見しづらい
ボーンキャビティーが様々な疾患の要因になり得るのなら、なるべく早く除去したいものですよね。実際、骨の中に生じた異常は、ほとんどの場合レントゲン写真を撮影すると見つけることができます。
ところが、抜歯後に生じたボーンキャビティーはとても小さく、通常のパノラマエックス線写真では写し出せないことも多いのです。
また、感染した根管に生じたボーンキャビティーは、それ自体はよくある根尖病巣や歯根嚢胞(しこんのうほう:歯根にできた膿の袋のようなもの)との見分けが難しいですし、小さいボーンキャビティーは歯根に重なって判りにくく、発見が困難です。
ボーンキャビティーの治療法
ボーンキャビティーが生じていた場合、どのような治療法があるのでしょうか。以下でご説明しましょう。
摘出術
抜歯後に生じたボーンキャビティーは外科手術で摘出・除去します(腐骨除去)。
まず局所麻酔のうえ、歯肉を切開して骨を露出させます。そして骨を削り、ボーンキャビティーとなっている感染組織とその周囲の骨を除去します。その後、切開した歯肉を元に戻して縫合して閉じます。
抜歯術
感染した根管に生じたボーンキャビティーは、抜歯して取り除きます。
こちらも局所麻酔のうえ、まず原因の歯を抜歯します。そして抜歯したところから、必要に応じて骨を開削し、感染組織とともに、その周囲の骨を除去します。
ボーンキャビティーを防ぐには
不良肉芽組織の掻爬(そうは)
歯周病によって周囲の組織に感染が広がった場合、その歯根の周囲には不良肉芽組織(ふりょうにくげそしき)と呼ばれる細菌に感染した汚染物質が多く付着します。
抜歯の際は周囲の骨を含め、不良肉芽組織に接している組織をきれいに取り除く必要があります。
根管治療
虫歯が進行すると、歯の神経が壊死します。壊死すると、その歯は痛みを感じることはありません。その結果、虫歯を放置してしまう方がいらっしゃいますが、それは大変危険です。なぜなら、根管内部では細菌が増殖し、その温床になっているからです。
根管内部の感染から、身体の臓器にさらに感染が拡がり、炎症を起こしてしまう可能性があります。虫歯は放置せず、早めに根管治療を受けましょう。
根管治療については下記のコラムで詳しく解説しております。
ボーンキャビティのご相談もポラリス歯科・矯正歯科へ
根管治療を行ったり、抜歯が必要なほどの虫歯になった場合、歯根の先端にまで細菌感染が広がり、病巣ができて骨にまで到達している可能性があります。治療の際に、病気の原因となる箇所に的確な処置を施せていなければ、ボーンキャビティーになることも考えられます。
原因不明のアレルギー性疾患やリウマチ、自己免疫疾患などでお悩みの方は、もしかしたらボーンキャビティーが隠れているかもしれません。
ポラリス歯科・矯正歯科には、医療法人社団 千仁会の専門医が多く在籍し、一般的な歯科治療に加え、患者さんの様々なお悩みに対して、確かな治療を提供できる体制が整っています。今回のコラムを読んで、ボーンキャビティが気になる方や、ご質問がある方も、ポラリス歯科・矯正歯科でぜひ一度ご相談ください。