マタニティ歯科
妊娠中の虫歯治療
ポラリス歯科・矯正歯科でも、妊婦さんから虫歯治療について、以下ようなご質問をいただくことがあります。
- いつの時期なら治療をして良いの?
- 麻酔や使用する薬品は胎児に影響はないの?
- 詰め物や被せ物は作れるの?
妊娠中は、虫歯や歯周病などの歯やお口のトラブルが起こりやすくなります。お腹の中に赤ちゃんがいれば、治療に際して色々なことが気になりますよね。
もし、妊娠中に虫歯になってしまった場合、安全に治療を受けるにはどうすれば良いのでしょうか?今回は、そんな妊娠中の虫歯治療についてお話しします。
妊娠中に虫歯治療を受けられる時期
実は妊娠中に虫歯治療を受けられる時期は限られています。安全性の高い時期を選ぶことが大切です。
安全性の高い時期
妊娠中は、いつでも虫歯治療が受けられるわけではありません。虫歯治療を安全に受けられる時期は、妊娠期間を前期・中期・後期の3つに分けた場合の中期に当たります。妊娠中期は安定期とも呼ばれており、5ヶ月~8ヶ月頃、週で言えば19週~31週の時期です。
治療時期のポイント
詰め物・被せ物のページでも触れていますが、コンポジットレジン充填という1日で終わる治療もあるものの、あくまで例外です。歯科治療の多くは、とても日数がかかります。
ところが、虫歯治療に適した妊娠中期の期間は、2~3ヶ月ほどしかありません。コンポジットレジン充填のように短期間で終わるなら良いのですが、根管治療など、時間のかかる治療になる場合、中期の終わり頃に歯科医院を受診しても、間に合わないかもしれません。
ですので、妊娠中期の早い段階、もしくは前期の終わり頃に診療していただくことをおすすめします。
妊娠中の虫歯治療で使う薬
続いて、妊娠中の虫歯治療で使う薬についてご説明します。
局所麻酔
虫歯治療では、痛みを予防するために局所麻酔薬の注射をすることが多くなります。現在、日本国内でよく使われている局所麻酔薬は、キシロカインやリドカインという薬です。このように、名称に「カイン」と付くものは、麻酔薬と思っていただいて良いでしょう。
これらの局所麻酔薬は、通常の歯科治療で使う量の場合、お腹の赤ちゃんへの影響はほとんどなく、使用を控える必要はありません。
むしろ治療中の痛みによって、多くのアドレナリンが分泌される方が、お腹の赤ちゃんへの影響が強いので、痛みを取り除くために麻酔をしっかりと効かせることが大切とされています。
根管治療の薬剤
虫歯が大きくなり、歯の神経のあたりまで進んでしまうと、根管治療、いわゆる「神経を抜く」処置を行います。歯の根元にある根管の中の歯髄(しずい)を除去し、消毒してきれいにした後、最後は根管充填材という薬を詰めて終わります。詳しくは、根管治療の流れのコラムでも解説していますので、併せてご参照ください。
根管の消毒は一度では終わらないことが多く、次回の治療までの間に、消毒した根管の中で細菌が増えないよう、薬を少しだけ入れておきます。そして、唾液などが入り込むのを防ぐため、その上から仮の蓋をします。蓋をしているので、根管内部に入れた薬剤が漏れ出すことはほとんどありません。
根管内部に入れた薬が蒸発し、歯の根の先から体内に出ていく可能性もありますが、その量は大変少ないものです。お腹の中の赤ちゃんはもちろん、お母さんの身体にとっても、特に影響は出ないと考えられています。
妊娠中の虫歯治療で使う詰め物・被せ物
虫歯治療では詰め物や被せ物も使用しますが、妊娠していれば、その材質や治療期間も気になるところでしょう。以下で順を追ってご説明します。
プラスチック製の詰め物
虫歯が小さい場合は、先述のコンポジットレジンというプラスチック製の詰め物を使った治療が行われます。歯の色に似たプラスチック材料のため、目立ちにくいうえ、治療が1日で終わるなど、メリットの多い治療法です。
このコンポジットレジンというプラスチック材料は、様々な化合物で作られています。数年以上前の話になりますが、環境ホルモンの影響が話題になりました。コンポジットレジンには、ビスフェノールAという、環境ホルモンの一つとされる化学物質が含まれています。
欧州食品安全機関が、これに関して見解を発表し、その中で母体にも胎児にも、乳幼児にも安全であるとしています。したがって、プラスチック製の詰め物の安全性は問題ありません。
金属製の詰め物や被せ物
プラスチックで対応できない大きさの虫歯は、金属製の詰め物や被せ物を使用します。これらは、歯型を取って歯科技工所で製作します。
そのため、コンポジットレジンのように、歯科診察室で治療が完結するわけではありません。もし、悪阻(つわり)もあってえずきやすく、歯形を取るのが難しい場合は、仮の詰め物にとどめ、出産後に落ち着いてから治療を再開するのも良いでしょう。
セラミック製の詰め物や被せ物
セラミックで作られた詰め物や被せ物は、本物の歯と同じような自然な仕上がりになるのが特徴ですが、その他に、素材としての安定性がとても高いという利点もあります。
セラミック材料は唾液に溶け出すこともありませんし、酸化など、他の物質と反応して変化することもありません。使用する材料と身体との相性を生体親和性といいますが、セラミック材料は生体親和性が高いことでも知られています。
さらに金属材料と違い、金属アレルギーを起こすこともないのもメリットです。したがって、妊娠中の虫歯治療にセラミック材料を使うのは問題ありません。
大きな虫歯への対応
虫歯治療のページでも解説していますが、残根状態(ざんこんじょうたい:歯の大部分が溶けてなくなり、根だけ残っている。C4の状態)になるなど、虫歯があまりに大きくなりすぎると、根管治療をしても歯を残すことができなくなります。
つまり、抜歯しなくてはならないのですが、妊娠中の抜歯については、原則として避けるべきとされています。
歯肉の腫れを繰り返すなど、どうしても抜歯しなければならない場合に限り、妊娠中期に抜歯します。そうでなければ、薬による炎症緩和にとどめ、出産後に落ち着いてから抜歯を行います。
妊娠中の虫歯治療も安心してご相談ください
今回は、妊娠中の虫歯治療についてお話ししました。患者さんのお立場からすると、通常の虫歯治療でも何かと気になることがあると思いますが、妊娠されている場合は、なおさら疑問や不安を感じるものですよね。
お伝えしたように、妊娠中期(妊娠5~8ヶ月、19週~31週)であれば、安全性に配慮した虫歯治療を行うことができます。また、使用する麻酔や薬剤、詰め物・被せ物も、母体や赤ちゃんに影響を及ぼすことはありませんので、ご安心ください。
ポラリス歯科・矯正歯科は、多くの専門医が在籍する、医療法人社団 千仁会による万全のチーム医療を提供いたします。妊娠中の方への治療経験も豊富ですので、マタニティ歯科についても、お気軽にご相談いただければと思います。