審美歯科
ポーセレン・ラミネートベニアとセラミッククラウン、どっちが良い?
前回、ポーセレン・ラミネートべニアについてのコラムを掲載したところ、お問い合わせをいただくことも出てきました。歯をほとんど削ることなく、自然な光沢の美しい前歯にすることができるのは、ポーセレン・ラミネートべニアの大きなメリットです。また、審美性に優れた治療法はいくつかありますが、代表とも言えるのがセラミックを使った治療法ですので、注目される方も多くいらっしゃるのだと思います。
さて、セラミック材料を使った治療法としては、こちらもコラムでお伝えしたセラミッククラウンがよく知られていますが、ポーセレン・ラミネートベニアとはどんな違いがあるのでしょうか?
そこで今回は、ポーセレン・ラミネートベニアとセラミッククラウンを比較しつつ、治療の際の選び方や、どのような症例に適しているかもお伝えしましょう。
ポーセレン・ラミネートベニアとセラミッククラウンの特徴
はじめに、ポーセレン・ラミネートベニアとセラミッククラウンの特徴について、分かりやすくご説明します。
ポーセレン・ラミネートベニア
ポーセレン・ラミネートベニアは、前歯の表側を薄く削って、セラミックのカバー(シェル)を貼り付ける治療法です。セラミック材料ですので、本物の歯と同じような色合いや光沢感があり、自然で違和感のない仕上がりが得られます。
ただし、ポーセレン・ラミネートベニアは薄いセラミックのため、剥がれたり、割れたりする恐れがあり、歯が噛み合う箇所には使えません。
基本的には前歯の唇側(しんそく)面と呼ばれる表側にだけ用いられ、強い変色歯やすきっ歯の治療、矮小歯などの歯の奇形も改善させます。
セラミッククラウン
セラミッククラウンは、歯を広く削ってセラミックで作られた被せ物(クラウン)を装着する治療法です。こちらも同じくセラミック材料のため、本物の歯のような色合いや光沢感があり、周囲の歯と比べても違和感のない被せ物になります。
奥歯など、歯の噛み合う箇所にも使用できますし、歯の向きや位置にずれがあっても、セラミッククラウンならば、被せ物の形や向きをある程度調整できるので、対応することが可能です。虫歯や外傷で傷んだ歯を、自然で美しい仕上がりで治したい場合に効果的な治療法です。
ポーセレン・ラミネートべニアとセラミッククラウン、どちらを選ぶ?
では実際に、ポーセレン・ラミネートベニアとセラミッククラウンのどちらを選ぶかについて、その基準となるポイントをご紹介しましょう。
前歯か奥歯か
ポーセレン・ラミネートベニアは、前歯の表側だけを対象とした治療法です。上述のとおり、歯が噛み合う箇所には使えないため、奥歯を自然な仕上がりにしたいなら、選択肢はセラミッククラウンになります。
前歯であっても、裏側まで治す必要がある場合は、同様にセラミッククラウンが候補となります。前歯の表側だけで処置が済むなら、ポーセレン・ラミネートベニアも選択肢になるでしょう。
虫歯の有無
ポーセレン・ラミネートベニアは歯に貼り付けるため、治療が成功するかどうかは、接着力が鍵となります。接着力は象牙質よりエナメル質の方が高くなるので、削った表面にエナメル質が残されていることが大切です。
図のように、虫歯が進むと歯のエナメル質が失われていきます。エナメル質が失われると、ポーセレン・ラミネートベニアに不可欠な接着力に不安が生じるため、虫歯治療を行う必要があるならば、セラミッククラウンの方が適しています。
歯並びの状態
ポーセレン・ラミネートベニアは、歯の向きが少しだけ傾いているなど、わずかに位置や向きがずれている程度であれば処置が行えますが、歯の位置や向きが著しくずれてしまっている場合には向いていません。
歯並びの状態があまり良くない場合は、セラミッククラウンの方が良いでしょう。セラミッククラウンなら、歯の向きと同時に、歯の色や形もきれいに整えられます。
タイプ別、ポーセレン・ラミネートべニアとセラミッククラウンのおすすめ例
歯の場所や状態によるポーセレン・ラミネートベニアとセラミッククラウンの選び方についてお話ししましたが、より分かりやすくするために、患者さんのニーズに応じたおすすめ例もお伝えしましょう。
歯の黄ばみや変色が気になる方
前歯の黄ばみや変色が気になる場合、ホワイトニングで歯を漂白して白くするという選択肢があります。ただし、ホワイトニングの基礎知識のコラムでもお伝えしたように、治療期間や後戻りについて考える必要があり、食べ物や飲み物による歯の着色汚れや、タバコのヤニなどには効果がありません。
ホワイトニングでは改善できないほど、強く変色した前歯をきれいにしたいなら、ポーセレン・ラミネートベニアがおすすめです。もちろんセラミッククラウンでも美しい色になりますが、歯を削る量が多いので、ポーセレン・ラミネートベニアが使えるならば、歯への負担が少なくて済みます。
前歯のコンポジットレジンの変色をきれいにしたい方
小さい虫歯の治療では、コンポジットレジンというプラスチック材料を詰める治療がよく選ばれます。コンポジットレジンでの治療は、最短なら1日で終わるなど、短時間で済むのがメリットです。
ただし、詰めた当初は違和感の少ない色であっても、時間が経つにつれ、コンポジットレジンは少しずつ黄ばんできます。これはホワイトニングでは落とせません。また、縁どるように着色汚れが着くことも多くなります。
このような、時間の経過とともに生じるコンポジットレジンの変色が気になる方は、ポーセレン・ラミネートベニアでの治療がおすすめです。
前歯の隙間が気になる方
前歯部に生じた歯と歯の隙間が気になる方は、ポーセレン・ラミネートベニアでの治療は有力な選択肢の一つに挙がります。先ほどお話ししたように、歯を削る量が少なく、歯への負担が少ないからです。
ただし、隙間の大きさや歯並びの具合によっては、矯正治療が必要なケースもありますので、ご自身の歯の状態が気になる方は、お気軽にポラリス歯科・矯正歯科でご相談ください。
銀歯の見た目をきれいにしたい方
どうしても目立ってしまう保険適用の銀歯を、自然な光沢のある美しい歯に治したい方には、セラミッククラウンがおすすめです。
詰め物・被せ物のページでもご紹介していますが、中身が金属で、表面をコンポジットレジンでカバーしたレジン前装冠という被せ物の場合も、きれいに治すことを考えるなら、セラミッククラウンが良いでしょう。
虫歯をきれいに治したい方
お伝えしたとおり、虫歯によってエナメル質が損傷した歯に対しては、ポーセレン・ラミネートべニアは接着することができません。前歯や奥歯に関係なく、虫歯になった歯をきれいに治したい方は、セラミッククラウンが選択肢になります。
患者さんに応じて、ポーセレン・ラミネートべニアとセラミッククラウンの治療を選択
今回は、ポーセレン・ラミネートベニアとセラミッククラウンの特徴や、どんな症状に対して適用できるかをお話ししました。どちらもセラミック材料を用いた治療ですが、各々違いがあることをご理解いただけたかと思います。
前歯だけを治療の対象とし、虫歯にもなっていない場合は、治療期間も短く、自然できれいな歯にすることができるポーセレン・ラミネートべニアは有力な選択肢になります。奥歯などのしっかりと噛み合わせる歯や、虫歯がある場合、歯並びに問題がある場合などは、強度が高く、美しい仕上がりも得られるセラミッククラウンが候補となるでしょう。
詰め物や被せ物には様々な種類がありますが、何より大切なのは、患者さん一人一人に合った歯科材料を用いた治療を行うことです。ポラリス歯科・矯正歯科は、医療法人社団 千仁会に所属する専門医が在籍し、丁寧なカウンセリングに基づいて、患者さんに最適な治療法をご提案いたします。
セラミック素材を用いた治療についても、豊富な知識と経験を有した歯科医師と歯科衛生士が在籍しておりますので、ポーセレン・ラミネートべニアやセラミッククラウンについて、ご質問やご相談がある方は、ぜひポラリス歯科・矯正歯科にお問い合わせいただければと思います。