お口だけでなく目も乾くなら、シェーグレン症候群かも

お口だけでなく目も乾くなら、シェーグレン症候群かも
 

ポラリス歯科・矯正歯科の患者さんの中には、虫歯歯周病だけでなく、以前コラムでご紹介したお口の乾燥や渇きを訴えて来院される方もいらっしゃいます。

 

ただし、お口が乾くだけでなく、目も乾くなら、もしかしたらシェーグレン症候群(sjogren syndrome SS)という病気が隠れているかもしれません。

 

シェーグレン症候群は、なかなか聞きなれない病名なので、ご存知ない方も多いと思います。今回は、そんなシェーグレン症候群について解説します。

シェーグレン症候群とは?

シェーグレン症候群とは?
 

私たちの体には、細菌やウイルスなどの外敵から身を守るための免疫システムが備わっています。しかし、この免疫システムが誤って自分自身の組織を攻撃してしまうことがあります。

 

このような病気を自己免疫疾患といい、シェーグレン症候群もその一つです。シェーグレン症候群は、唾液や涙を作り出す組織を攻撃する自己免疫疾患です。

 

この病名は、シェーグレン症候群を初めて報告したスウェーデンの眼科医、ヘンリック・シェーグレンにちなんで名付けられました。

 

自己免疫疾患の原因は、免疫の異常に加えて、遺伝的要因やウイルス感染などが考えられていますが、現在のところ詳しいことはまだ解明されていません。ただ、シェーグレン症候群は女性に圧倒的に多いことから、女性ホルモンが関与している可能性を指摘する研究者もいます。

シェーグレン症候群の発生頻度

シェーグレン症候群の発生頻度は主に50代以降で、圧倒的に女性の患者さんが多い
 

シェーグレン症候群は、主に50代以降に発症することが多く、上述のとおり、特に女性に多く見られます。男女比は1:17と、圧倒的に女性の患者さんが多いことが特徴です。

 

また、リウマチや膠原病を患っている方は、シェーグレン症候群を合併しやすい傾向があります。

シェーグレン症候群は指定難病

シェーグレン症候群は指定難病
 

難病とは、国が治療法などの研究に取り組んでいる、治りにくい病気のことです。

 

難病の中でも治療期間が長く、治療費も高くなりやすい病気に対し、医療費の負担を軽くするために特に国が指定した病気が指定難病です。シェーグレン症候群は、この指定難病の一つとして認められています。

シェーグレン症候群の主な症状

シェーグレン症候群の主な症状は、ドライマウスとドライアイが挙げられます。

ドライマウス

シェーグレン症候群の主な症状:ドライマウス
 

ドライマウスとは唾液が出にくくなり、お口の中が乾燥しやすい状態を指します。ドライマウスについては、以前ご紹介した口腔ジェル・口腔保湿剤の使い方のコラムで詳しく解説していますので、併せてご参照ください。

 

唾液には、口の中の汚れを洗い流す洗浄作用、細菌の活動を抑える抗菌作用、虫歯菌が作り出した酸を中和する緩衝(かんしょう)作用、初期の虫歯を治す再石灰化作用といった、大切な役割があります。

 

シェーグレン症候群になると、これらの働きが低下し、お口や歯に様々なトラブルが生じやすくなるのです。

ドライアイ

シェーグレン症候群の主な症状:ドライアイ
 

ドライアイは、文字通り目が乾燥している状態を指します。テレビのCMなどでもよく見ると思いますが、目が乾きやすくなったり、目がゴロゴロしやすくなったりすることもあります。また、目の痛みや目の疲れ、眩しさの原因にもなります。

その他の症状

シェーグレン症候群は、鼻が乾燥しやすくなったり、鼻血が出やすくなったりすることもあります。

歯科でのシェーグレン症候群に対する取り組み

現在のところ、シェーグレン症候群を完治させる特効薬はありません。そのため、症状を改善させる対症療法が中心になっています。

 

ここでは、シェーグレン症候群に対し、歯科医院ではどのようにして治療に取り組んでいるのかを説明します。

唾液腺の刺激

シェーグレン症候群に対する取り組み:唾液腺の刺激
 

まず挙げられるのが、唾液が出にくくなって乾燥しているお口に潤いを取り戻す処置です。例えば皆さんは、梅干しを想像したら唾液が出ませんか?唾液腺は梅干しの想像だけでも刺激されて唾液を出します。

 

そこでガムを噛んだり、レモンや梅干しなどの酸っぱいものを摂取したりすることで、唾液腺を刺激し、唾液の分泌を促します。

唾液の分泌を促進する薬

シェーグレン症候群に対する取り組み:唾液の分泌を促進する薬,サラジェン(ピロカルピン塩酸塩)やエボザック(セビメリン塩酸塩)
 

唾液を出しやすくする口腔乾燥症状改善薬を処方することもあります。サラジェン(ピロカルピン塩酸塩)やエボザック(セビメリン塩酸塩)などが代表的です。

 

これらの薬は、シェーグレン症候群患者の6割以上に効果があると言われていますが、副作用もあるため、少量から開始し、徐々に量を増やしていきます。また、漢方薬も用いられることがあります。

口腔ジェルや口腔保湿剤の使用

シェーグレン症候群に対する取り組み:口腔ジェルや口腔保湿剤の使用
 

薬を使ってもすぐに唾液が出るとは限らないので、口腔ジェルや口腔保湿剤(人工唾液)でお口の中を潤すのも効果的です。

 

先ほどご紹介した口腔ジェル・口腔保湿剤の使い方のコラムで詳しくお伝えしていますが、これらの製品にはスプレータイプやジェルタイプ、リキッドタイプなど、それぞれの特徴がありますので、症状や使い方に合わせて選ぶと良いでしょう。

虫歯・歯周病予防

シェーグレン症候群に対する取り組み:虫歯・歯周病予防
 

唾液が少なくなると、お口の中の細菌が原因で起こる虫歯歯周病などのトラブルが起こりやすくなります。こうしたトラブルを防ぐのも歯科で行う対策になります。

 

先述のとおり、唾液が減ると、抗菌作用・洗浄作用・緩衝作用など、虫歯や歯周病を抑える働きも低下します。そこで歯科医院では、PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)による専用機材での歯のクリーニングや、歯磨き指導(TBI:Tooth Brushing Instruction)などを行い、虫歯や歯周病を予防します。

カンジダ予防

シェーグレン症候群に対する取り組み:カンジダ予防
 

カンジダはカビ菌の一種で、健康な方でもお口の中にいます。しかし、唾液が減少すると、カンジダの増殖を抑える力が弱まり、カンジダ症を発症しやすくなります。

 

カンジダ症を発症した場合は、抗真菌薬を用いて治療するのが一般的です。

食事の見直し

シェーグレン症候群に対する取り組み:食事の見直し
 

ビスケットやパンなど、水分を吸収する食べ物は、お口が乾くと食べにくくなります。

 

シェーグレン症候群の方は、お口が乾きづらい食品を選んだり、食事の温度を調整したりするなどの工夫が必要です。また、虫歯を防ぐためにも糖分の多い食べ物や飲み物を控え、間食を取り過ぎないことが大切です。

お口や目の乾燥が気になる方は、一人で悩まずポラリス歯科・矯正歯科にご相談を

医療法人社団 千仁会は、北海道に6医院を展開する総合歯科グループです。幅広い知識と技術を持った多くの専門歯科医が在籍し、チーム医療で総合的な歯科治療を実現しています。
 

お伝えしたように、シェーグレン症候群は自己免疫疾患の一つで、指定難病にも認定されています。残念ながら、現在のところ完治させる方法は見つかっておらず、治療は症状を緩和するための対症療法が中心です。

 

シェーグレン症候群の対応には、この病気に対する専門的な知識が不可欠です。ポラリス歯科・矯正歯科には、北海道大学歯学部臨床教授も務める千田理事長が率いる医療法人社団 千仁会の歯科医師が多く在籍し、専門的な知識と経験をベースとした幅広い歯科治療を行っておりますので、ぜひ一度当院にご相談ください。