歯の治療全般
歯垢と歯石の違いって?
皆さんは、歯垢(しこう)と歯石(しせき)の違いが分かりますか?
歯科治療の分野ではよく聞く言葉ですが、一般的には「歯に付着して、虫歯や歯周病の原因になるもの」…そんなイメージかもしれませんね。もちろん間違いではありません。
他にも歯磨き粉のCMなどでは、プラークコントロールをアピールする商品もありますが、プラークという言葉も耳にすることがあるでしょう。
このように、様々な単語があるものの、各々の違いについてはなかなか明確な説明がありません。そこで今回は、歯垢や歯石について、その定義や特徴、予防法などを詳しくお話ししたいと思います。
歯垢と歯石の定義
歯垢とは、プラークとも呼ばれていて、口の中の食べカスと細菌の塊のことです。歯垢とプラークは同じ意味であり、歯垢の英訳がプラーク(plaque)です。歯垢は歯の表面や歯と歯の間、歯と歯茎の境目に付着しています。
一方、歯石は歯垢にカルシウムが沈着し、石のように硬くなったものを言います。唾液の中にはカルシウムやリンなどのミネラルが含まれていますが、唾液が歯垢に長時間触れていると、カルシウムが付着し、歯垢が石のように硬く変化するのです。
そして、歯石の表面に歯垢が溜まると、それがまた歯石となり、まるで鍾乳石のように徐々に大きくなっていきます。
歯垢ができる過程
食事の時、歯の表面に食べカスが付着すると、その食べカスを元にして、口の中にいる細菌が定着します。その後数時間かけて細菌は爆発的に増え、歯垢が形成されます。
一度歯垢が形成されると、自然と消失することはありません。ただ、歯垢はうがい程度では除去できませんが、きちんと歯ブラシや歯間ブラシを使えば、取り除くことが可能です。
歯石ができる過程
先ほどお話ししたように、歯石とは、歯垢と唾液が長い時間触れ合うことで、徐々に歯垢にカルシウムが沈着していき、結晶化して形成されるものです。
そのため、数日で歯石が形成されるわけではありません。通常は数週間~数ヶ月かけて歯石が形成されます。そして、歯石の表面に溜まった歯垢がさらに歯石へと変化することで、徐々に大きくなります。
歯石は唾液に最も触れる部位にできやすいため、一般的には下の前歯の裏側に歯石ができるケースが多くなります。歯石になると、うがいはもちろん、きちんと歯磨きをしても、除去することは困難になります。
歯垢と歯石の特徴
歯垢は細菌の塊のため、虫歯と歯周病の両方を引き起こします。虫歯治療のページでもお伝えしていますが、歯の表面に歯垢が長時間付着していると、ミュータンス菌が作り出した酸によって歯の表面が溶け、虫歯が進行します。また、歯と歯茎の境目に歯垢が付着すると、徐々に歯周ポケット内部で炎症が起こり、歯周病が発生・悪化します。
歯石は虫歯を引き起こすことはありません。しかし歯石が付着している部位の歯茎は、きれいにするのが難しくなるため、歯周病を悪化させることがあります。特に、歯茎の中に形成された歯石(歯肉縁下歯石:しにくえんかしせき)は非常に厄介です。通常の器具では除去できないので、歯周病が悪化する大きな要因になってしまうのです。
歯垢は比較的柔らかいため、前述のとおり、歯磨きで除去することが可能です。一方、歯石は非常に硬く、強固に歯の表面に付着しているため、一般的な歯磨きだけで除去することは困難です。
歯周病治療のページでも触れていますが、歯石を除去するためには、PMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)など、歯科医院で専門的な器具を利用した処置を行う必要があります。
歯垢と歯石の予防
歯垢は食べカスに細菌が付着して形成されますから、歯垢の原因は食事にあります。歯垢の形成を予防するためには、食事の回数を一定に保つことが大切です。一日3回の食事を守り、間食はなるべく控えるようにしましょう。
歯石は、歯に溜まった歯垢が原因で形成されます。つまり、歯垢が歯石の原因と言えます。歯石ができないようにするには、きちんと歯磨きして歯垢をしっかり落とすことが重要です。毎食後、忘れずに歯磨きして歯垢を除去することで、歯石の形成を予防できます。
正しい歯磨きの方法は?
上述のとおり、適切な歯磨きを行うことが、歯垢や歯石の効果的な予防につながります。歯ブラシは持ちやすい持ち方で構いませんが、あまり力を入れすぎないようにしてください。
そして、歯ブラシは細かく動かすこともポイントです。細かく、歯を一本ずつ磨くようにすると、歯と歯茎の間や、歯と歯の間の狭い箇所にも毛先が入ります。
また、デンタルフロスや歯間ブラシなどの補助用具を使用することもおすすめです。通常の歯ブラシでは届かないところも、補助用具を使うことできちんと清掃できます。
定期的な歯科検診と歯のクリーニングが大切
食事は毎日のことですから、歯垢や歯石を放置してしまうと、新たな食べカスを付着しやすい状況を作るため、歯磨きでは落とせなくなってきます。そうなると、お伝えしたように歯周病が悪化する原因にもなります。
また、歯石や歯垢は食べカスと細菌の塊です。そのため、放置しておくと細菌が発生させるガスによって、口臭も発生します。やはり歯垢や歯石は、適切なタイミングでしっかりと除去することが大切です。
歯垢は歯磨きやデンタルフロスを用いて除去できますが、歯石は歯に強く付着しているため、一般的な歯ブラシでは除去できません。歯科医院で歯石除去用の超音波装置や特殊な器具を用いて、一つ一つの歯の歯石を丁寧に取り除きます。
セルフケアとプロフェッショナルケアを併用
ただし、歯垢であれば自分でケアできると安心してしまうのは良くありません。自己流では正しい歯磨きができなかったり、磨き残しもあるものです。
ご自身での毎日のお口のケア(セルフケア)は基本としつつも、定期的に歯科医院を受診して、自分では取れない歯石を除去し(プロフェッショナルケア)、虫歯や歯周病が発症・悪化していないかを確認することを習慣づけてください。
しっかりとしたプラークコントロールを行うことは、虫歯や歯周病を防ぎ、お口の健康を保つ一番の基本です。歯垢や歯石が気になる方は、お気軽にポラリス歯科・矯正歯科にご相談ください。