歯の治療全般
ミューイングとは?
長く続いたマスク生活で口元や顎を気にしなくなり、知らず知らずの間にお口や頬のたるみが気になるようになってきたという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
それでもマスクをつけていれば分からなかったのですが、外出時のマスク着用が緩和された今、以前よりも口元やフェイスラインのたるみが気になり始めたという方も増えてきました。
そこでお試しいただきたいのがミューイングと呼ばれる、舌のトレーニング方法です。今回は、ミューイングについてご紹介します。
矯正医が開発したミューイング
ミューイングは、1980年代にイギリスの矯正歯科医のマイク・ミュー先生と、その息子であるジョン・ミュー先生が開発した舌のトレーニング法です。Youtubeでマイク・ミュー先生の解説による動画を見ることができますので、興味のある方はご覧になってみてください。
舌の位置が歯並びや顎の発達に大きく影響することに着目し、研究と臨床を重ねて体系化されたものがミューイングで、ずれてしまった舌の位置を正しい位置に戻すことを目的としています。
ミューイングは、英語ではMewingと書きます。語源は開発者の名前から取られたという説のほか、英語で猫の鳴き声「mew mew(ミャーミャー)」に由来しているという説もあります。これは、ミューイングで舌を上顎に押し当てている表情が、鳴いている猫の表情に似ていることから来ています。
正しい舌の位置
普段意識することはありませんが、舌にも正しい位置があります。意識してみると自分の舌が普段どこにあるのか、意外と分からないものです。
滑舌が悪い?それって低位舌(ていいぜつ)が原因かものコラムで解説しましたが、正しい舌の位置とは、舌の先が上の前歯のすぐ裏の歯茎に軽く触れ、舌全体が上顎に吸いつくように、ぴったりと収まっている状態です。
試しに、肩の力を抜いてリラックスした状態で、真っ直ぐ前を向いてみてください。その時、舌はどこにありますか?もし、舌先が下の前歯の裏側に触れていたり、上の前歯を押していたりするようであれば、位置がズレているということになります。
舌の位置が悪いと、顎のたるみ、歯並びの悪化、口呼吸、成長期のお子さんでは顎の骨格の成長不全などが起こります。注意しましょう。
ミューイングの方法
ミューイングは、次の3ステップで行えます。
- 舌先を上顎の前歯の裏側の歯肉に当てる
- 舌全体を上に持ち上げて、上顎のくぼみに舌をおさめる
- 胸を開いて肩を引き、姿勢を正しくする
最初はコツを掴むのが難しいかもしれませんが、諦めずに続けることが大切です。毎日、数分から数十分、気がついた時に繰り返し練習することで少しずつ慣れていきます。
ミューイングで鍛えられるのは舌(舌筋:ぜっきん)だけではありません。以下のようなお口周りの筋肉にも効果的に働きかけます。
- オトガイ筋(下顎の先端部分の筋肉)
- 口輪筋(
こうりんきん
:口の周りの筋肉) - 顎舌骨筋(がくぜっこつきん:下顎骨の内側の筋肉)
- 頬筋(きょうきん:頬の筋肉)
ミューイングは、特別な器具もお金も必要なく、場所を選ばずに実践できるトレーニング方法です。ぜひ、毎日の習慣に取り入れてみてはいかがでしょうか。
ミューイング8つの効果
ミューイングで舌の位置が戻ると、次のような効果が期待できます。
二重顎の改善
二重顎の原因は、肥満や加齢だけではありません。舌の筋肉(舌筋)の緩みも大きな要因の一つです。ミューイングによって舌が正しい位置に引き上げられると、顎下の組織も一緒に持ち上げられ、二重顎の改善が期待できます。
顔のたるみ解消
舌の筋肉は、顔の表情を作り出す表情筋と関連しています。ミューイングによって舌の位置が改善されると、それに伴って表情筋も活性化され、顔全体のリフトアップ効果が期待できます。
ほうれい線の改善
ほうれい線は、鼻の横から口の角に向かうシワのことです。一見、ほうれい線と舌は関係なさそうですが、実は舌が下がっていると、ほうれい線も目立ちやすくなってしまいます。
ミューイングで舌の位置が上がると、ほうれい線も目立ちにくくなります。
頬や口元のたるみ改善
頬や口元のたるみにもミューイングは効果があります。ミューイングでトレーニングすると、舌筋だけでなく、口周りの筋肉(口輪筋)や頬の筋肉(頬筋)など、周辺の筋肉を同時に鍛えられます。これらのお口周辺の筋肉が強化されることで、頬や口元のたるみも改善できます。
フェイスラインの改善
ミューイングで二重顎や顔のたるみが解消されると、顔全体のフェイスラインもきれいになります。
歯並びの悪化を防ぐ
舌の位置が悪いと、上顎前突(じょうがくぜんとつ:出っ歯のこと)やすきっ歯(空隙歯列:くうげきしれつ)、開咬(かいこう)などの歯列不正になりやすいといわれます。
もちろん、舌の位置が戻っただけで歯並びが改善されるわけではありませんが、舌癖を改善し、これ以上歯並びが悪化するのを防ぐ効果が期待できます。
特に、矯正治療中や治療後の方は、後戻り予防のためにもミューイングの実践がおすすめです。
口呼吸を防ぐ
舌の位置が下がっていると、口呼吸になりやすい傾向があります。口呼吸は口の中が乾燥し、虫歯や歯周病だけでなく、アレルギー性疾患やリウマチなどの全身的な病気を引き起こすことにもつながるため、注意が必要です。
舌が正しい位置にあると、必然的に鼻呼吸になりますので、口呼吸による健康悪化を防げます。
顎の成長発育を促進する
成長期のお子さんの場合は、舌の位置は顎の骨格の成長発育にも影響します。舌の位置が正しいところにあると、顎の骨格の成長発育が理想的な方向に刺激され、顔立ちも良くなります。
お子さんのお口周りの筋肉の動きを正常化させるには、今注目されているMFTとは?のコラムでご紹介したMFT(Myofunctional Therapy:口腔筋機能療法)も有効です。興味のある方は併せてご参照ください。
継続的なトレーニングで健康的な口元へ
今回は、ミューイングという舌のトレーニング法について紹介しました。ミューイングを続けることで、舌の筋肉(舌筋)だけでなく、お口周りの様々な筋肉を鍛えることができます。
ただし、ミューイングは、あくまでも筋肉を鍛えることで、たるみの改善が期待できるトレーニングです。そのため、顎の骨格自体を大きく変えるものではないことは、ご理解ください。
なお、歯並びや噛み合わせなど、根本的な問題を解決したいとお考えの場合は、矯正治療が必要となります。
ポラリス歯科・矯正歯科は、様々な歯科治療を一つの歯科医院で完結できることを理念としています。歯並びや口元のことでお悩みの方、矯正治療に興味がある方やミューイングについてもっと詳しく知りたい方など、どんな些細なことでも、まずは札幌駅すぐのポラリス歯科・矯正歯科までお気軽にご相談ください。