小児歯科
舌足らずの原因は舌小帯(ぜつしょうたい)かも…舌小帯付着異常の問題と治療法
お口の中には小帯とよばれる「スジ」が存在します。唇の裏から上顎の前歯に伸びる上唇小帯(じょうしんしょうたい)や、下唇の裏から下顎の前歯に伸びる下唇小帯(かしんしょうたい)などは、ご自身でも確認しやすい部分です。
そのほか、舌の裏側にもスジが存在し、舌小帯(ぜつしょうたい)と呼ばれています。この舌小帯は、舌の運動や口の開閉をコントロールする役割を果たしているのですが、生まれつき短かったり、舌先に近い部分に付いていると、舌の動きを制限してしまうことがあり、そのような状態を舌小帯付着異常(ぜつしょうたいふちゃくいじょう)といいます。
では、舌小帯付着異常になると具体的にどのような問題が起きるのでしょうか。今回は、舌小帯の付着異常について詳しく解説します。
舌小帯付着異常とは
舌小帯付着異常とは、舌小帯の形や大きさ、位置などが正常と異なる病態のことで、病状によって舌小帯短縮症(ぜつしょうたいたんしゅくしょう)、舌小帯癒着症(ぜつしょうたいゆちゃくしょう)、舌小帯強直症(ぜつしょうたいきょうちょくしょう)などの病名が付けられています。
なお、舌小帯付着異常の原因の多くは先天異常と考えられていますが、舌小帯の形や大きさ、位置などに異常があっても、ほとんどのケースにおいて、痛みや腫れなどの自覚症状はありません。
舌小帯付着異常の問題点
舌小帯付着異常の問題点は、舌の動きに制限が加わることです。付着異常が生じると、発音障害や摂食障害などを起こしてしまう場合があります。乳児期、幼児期、成人期それぞれの問題点を見ていきましょう。
乳児期
赤ちゃんは母乳を吸う時、お口の中を陰圧にして吸い込み、舌を使って喉に送り込みます。そして、舌を上顎に当てて飲み込みます。
しかし舌小帯付着異常があると、舌の動きが悪くなり、「母乳を飲み込む」というごく自然な働きも難しくなってしまいます。
赤ちゃんの時期に舌の動きが悪くなると、哺乳障害や嚥下障害の原因となり、「哺乳に時間がかかる」「浅飲み」「授乳が頻回になる」「体重が増えない」といった問題を生じることがあります。
幼児期
舌小帯付着異常があると発音障害が生じます。言葉を発する時、舌はとても複雑な動きをするのですが、舌小帯付着異常があると舌の動く範囲が狭められるため、はっきりと言葉を話すことが難しくなってしまうのです。
滑舌が悪く、いわゆる舌足らずな話し方になってしまい、特に「サ行」「タ行」「ナ行」「ラ行」の発音が困難になります。
滑舌が悪くなってしまう理由については、滑舌が悪い?それって低位舌(ていいぜつ)が原因かものコラムでも詳しく解説しておりますので、併せてご参照ください。
成人期
舌小帯付着異常があると、言葉の発音が不明瞭になり、はっきりと話すことができません。大人になると、それをコンプレックスに感じてしまう方もいらっしゃるでしょう。
また、舌の運動障害や発音への影響のほか、「歯型が取りづらい」「入れ歯がフィットしにくい」などの問題が起きる場合もあります。
舌小帯付着異常の見分け方
小帯付着異常かどうかは、舌を伸ばした際の状態で見分けることができます。気になる方は、かかりつけの歯科医院で相談すると良いでしょう。
また、小帯付着異常であっても、日常生活に支障がなければ治療の必要はありません。歯科医院で定期的に経過観察を受けて状態を確認し、必要に応じて処置を行なってください。
舌先がクサビ型になる
舌を上顎に向かって挙げた時、舌先が引っ張られてクサビ状にくぼむ場合は、舌小帯付着異常の可能性があります。
舌先がハート型になる
舌を前に伸ばした時、舌先がハート型にくぼむ場合は、舌小帯付着異常が疑われます。
舌先が前に出ない
舌を前に伸ばした時、下の前歯より前に出せない場合は、舌小帯付着異常の可能性が高くなります。
舌小帯付着異常の治療法
舌小帯付着異常の治療は、局所麻酔下で行われることがほとんどで、具体的な舌小帯付着異常の治療法としては、主に次の2つです。いずれも健康保険が適用されます。
舌小帯切除術(ぜつしょうたいせつじょじゅつ)の流れ
舌小帯切除術は、形や大きさに異常のある舌小帯を切除する処置です。
- 舌小帯の周囲に局所麻酔を行う
- 鉗子(かんし)で舌小帯を挟む
- 挟んだ鉗子の上面に滑らせるように切開し、舌小帯を切除する
- 鉗子の下面も同様に切開し、舌小帯を切除する
- 菱形に開いた舌小帯を縦に縫合する
舌小帯切離術(ぜつしょうたいせつりじゅつ)
舌小帯切離術は、舌小帯に切開を加えるだけにとどめておく処置です。
- 舌小帯の周囲に局所麻酔を行う
- 舌を上に伸ばす
- ピンと張った舌小帯に対して水平に切開する
- 菱形に開いた舌小帯を縦に縫合する
レーザーを使用した治療法
これら2つの他に、近年注目を集めているのが、レーザーメスを使った舌小帯付着異常の治療法です。
レーザー治療の最大のメリットは、出血がしにくいことです。レーザーで患部を切除した場合、熱作用で血管の断端が塞がれるため、出血がほとんどなく、止血のための縫合をしなくても安定する場合があります。
また、痛みや腫れがほとんどないうえ、癒着も起こしにくく、治癒が早いというメリットがあります。ただ、全ての歯科医院でレーザー治療を行っているわけではありません。ご興味のある方は、事前に問い合わせると良いでしょう。
舌小帯の異常かも…と思った際もポラリス歯科・矯正歯科へ
お伝えしてきたように、お子さんが舌を伸ばした時、「先端がハート状になる」「発音が不明瞭ではっきりと話せない」などの症状がある場合は、舌小帯付着異常が疑われます。
舌小帯付着異常は、痛みや腫れなどの状態がないため、そのまま放置する方も多い病気です。しかし、嚥下障害や咀嚼障害、発音障害の原因にもなるため、できることなら小さな頃に治療しておくことが望ましいと言えるでしょう。
ポラリス歯科・矯正歯科は、医療法人社団 千仁会の専門医が多く在籍し、一般的な歯科治療だけでなく、様々なお口のトラブルにも対応できる歯科医院です。ご自身やお子さんが舌小帯付着異常かも…と思われた際も、安心してポラリス歯科・矯正歯科にご相談ください。