歯の治療全般
口腔ジェル・口腔保湿剤の使い方
ポラリス歯科・矯正歯科では、一般的な歯科診療はもちろん、患者さんのお口の健康をトータルで考えることを重視しています。
そこで今回は、お口の乾燥と、それを防ぐ口腔ジェルや口腔保湿剤について触れてみたいと思います。北海道のように寒い地域では、お口の乾燥が気になる方も多いのではないでしょうか。
また、加齢によって、お口の乾燥に悩まされる方も増えてきます。お口の乾燥は、虫歯や歯周病だけでなく、様々な症状を引き起こします。
唾液の量が少なくなると様々な悪影響が
通常、お口の中は唾液で潤った状態になっています。しかし唾液の量が減少すると、潤いが失われ、お口が乾燥するようになります。そして、唾液は唾液腺という組織で作られるのですが、唾液腺は歳を取るにつれて働きが弱くなり、次第に唾液を作り出しにくくなっていきます。
この加齢に伴う口腔機能の衰えはオーラルフレイルと呼ばれ、日本歯科医師会や長寿科学振興財団のほか、各地方自治体や製薬メーカーも着目しています。超高齢化社会の日本では、高齢者がお口の健康を維持できるのは、心身の健康にもつながるため、とても大切なことなのです。
お口の乾燥症(ドライマウス)の影響
では早速、お口の乾燥(ドライマウス)がもたらす様々な症状を挙げていきましょう。乾燥が引き起こす症状はとても多いので、代表的なものをご説明します。
飲み込みにくくなる
お口が乾いて食べ物が飲み込みにくくなった経験がありませんか?唾液には食べ物を運ぶ役割もあります。お口が乾くと、食べ物を飲み込みにくくなってきます。
免疫力の低下
口呼吸する方は、風邪やインフルエンザにかかりやすい傾向があります。唾液には、細菌やウイルスの活動を抑える働きがあるのですが、口呼吸をすると唾液が乾燥し、この防御作用を発揮できなくなります。お口の乾燥は、免疫力の低下も引き起こします。
口唇炎と口角炎
唇の潤いは唾液に頼る部分が大きく、お口が乾燥して唾液が少なくなると、唇も同時に乾いてくることがあり、唇が荒れる原因となります。症状によっては、口の角も一緒に荒れてくることもあります。
虫歯
虫歯は、ストレプトコッカス・ミュータンスなどの虫歯の原因菌によって起こる病気です。唾液が減ると、虫歯菌の活動を抑えられなくなるなど、唾液の持っている虫歯の予防効果が得られなくなってきます。こうして虫歯になりやすくなるほか、歯周病のリスクも高まります。
口臭
お口の粘膜も、他の皮膚と同じく垢が出ます。通常は唾液によって流されますが、お口が乾燥すると、古い粘膜の垢がお口の中に溜まったままになります。
また、痰も洗い流されないので、乾燥して溜まってきます。食べた後の汚れも同様です。これらが原因となり、口臭を発生させます。
お口の痛み
お口の粘膜が乾くことで、粘膜が傷つきやすくなります。これにより、痛みやしみる感覚を覚える方もいらっしゃいます。
入れ歯が合いにくくなる
唾液には潤滑作用があり、入れ歯が粘膜に強く擦れないようにしてくれています。唾液が減ると、入れ歯が直接粘膜に触れるようになり、粘膜を傷つけたり、痛みを生じるようにもなります。
口腔ジェル・口腔保湿剤の活用を
唾液の減少によるお口の乾燥を防ぐには、口腔ジェルや口腔保湿剤を使用するのが効果的です。口腔ジェルや口腔保湿剤とは、お口に潤いを与える薬で、人工唾液とも呼ばれます。
水や保湿成分に加え、抗菌成分や香料などが配合されています。ドラッグストアでも販売されていますし、Amazonや楽天など、インターネット通販でも入手することができます。
お口を適度に保湿することで、先ほどお話ししたような症状を抑えることができます。唾液が減少して乾きやすくなっている方が、口腔ジェルや口腔保湿剤を使うと、以下のような効果が望めます。
お口の保護
保湿剤を使ってお口の乾燥を防ぎ、適度な潤いを保ち続けると、お口の粘膜や舌、頬が様々な刺激から守られます。乾燥により歯肉が傷んでいる方は、潤いを回復することで、歯磨きしても出血しにくくなります。
口臭予防
お口の汚れや古くなって剥がれた粘膜などを、保湿剤が洗い流しますので、口臭を予防する効果も得られます。
口唇炎や口角炎の予防
お口が潤うことで、唇も同時に潤うようになります。唇の乾燥が抑えられるため、唇は荒れにくくなり、口角炎も防げます。
虫歯予防
お口の汚れが洗い流されることで、虫歯をはじめとした歯の病気になりにくくなります。
入れ歯の適合性向上
入れ歯と粘膜の間に保湿剤が浸透することで、入れ歯と粘膜が直接触れ合わなくなり、入れ歯が使いやすくなります。
口腔ジェル・口腔保湿剤の種類
現在、市販されているお口の保湿剤は3種類です。(わかりやすくするために、実際の商品例をご紹介しますが、当院が推奨しているわけではありません。ご自身に合ったものをご使用ください)
スプレータイプ
スプレータイプの口腔保湿剤は、お口の乾燥感が気になった時に、お口にスプレーしてお口を湿らせるものです。持ち運びしやすい上に、スプレーするだけなので手軽で便利。つけすぎることがないので、スプレータイプの口腔保湿剤は、寝たきりの方にでも使いやすいのが特徴です。
一方、保湿時間は次にご紹介するジェルタイプと比べると短めです。
ジェルタイプ
ジェルタイプは、文字通りジェル状の保湿剤(口腔ジェル)です。蒸発しにくいので、保湿の効果が長続きします。
一方、ジェルタイプはネバネバすると感じる方もいらっしゃいます。これを不快に思う方は、同じシリーズのリキッドタイプで一度潤してから使うと、ネバネバ感が軽くなります。
リキッドタイプ
リキッドタイプはうがいをするタイプの口腔保湿剤です。一般的なうがい薬や洗口液と比べると、少し粘り気が強いのですが、アルコール成分が含まれていないので、刺激も少ないのが特徴です。
保湿効果に加えて、お口の中の汚れを洗い流す効果もあります。ただし、すぐに流れてしまうので、リキッドタイプの口腔保湿剤は1日数回の使用が推奨されています。
リキッドタイプの口腔保湿剤は、うがいをするだけで簡単に使えるのですが、当然吐き出す必要があり、寝たきりの方など、移動が難しい方には使いにくいのが難点です。
口腔ジェル・口腔保湿剤の選び方
口腔ジェルや口腔保湿剤は、症状や使い方によって選ぶようにしてください。
ネバネバ感のある方
実は唾液には、サラサラ成分とネバネバ成分があります。お口が乾燥しやすい方の多くは、サラサラ成分が減り、ネバネバ成分が相対的に増えています。ネバネバ感を感じている方は、サラッとしたタイプの口腔保湿剤が使いやすいでしょう。
しみる方
お口が乾燥して粘膜が傷むと、傷がしみるようになります。スッキリ感を高めたタイプを選ぶと、しみて痛くなることがありますから、しみている方は、刺激性の低い口腔保湿剤・口腔ジェルを選ぶのが良いでしょう。
洗浄作用を重視したい方
お口の汚れを洗い流したい方は、サラサラしたリキッドタイプの口腔保湿剤を使い、うがいを多くするのもおすすめです。
お口のケアを重視したい方
寝たきりの方などのお口のケアを重視するなら、単体で使うのではなく、スプレータイプの口腔保湿剤と口腔ジェルを組み合わせると効果的です。
口腔ジェル・口腔保湿剤の使い方
ではタイプ別の口腔ジェル・口腔保湿剤の使い方についてご紹介します。
スプレータイプ
こちらは簡単で、お口に向けて数回スプレーするだけです。
ジェルタイプ
1.保湿剤を出す
ご自身の指先に保湿剤を適量出します。1回あたりの量は、1cmくらいを目安にしてください。
2.お口に入れる
指先にとった保湿剤をお口に入れ、舌にのせます。舌を動かして、保湿剤がお口全体に行き渡るようにします。お口全体を湿らせた後に残った保湿剤は、吐き出してください。
もし、舌を使ってお口全体に行き渡らせることが難しい場合は、指先につけた保湿剤をお口全体に塗るようにしてください。
リキッドタイプ
お口に含んで20~30秒ほどうがいをし、吐き出します。ジェルタイプと組み合わせると、より効果的です。
お口の乾燥には気をつけて
唾液が減少してお口が乾くと、健康面で色々な悪影響が生じます。お口が乾きやすくなった方は、ぜひ口腔ジェルや口腔保湿剤で乾燥を防ぐようにしてください。
口腔ジェルや口腔保湿剤には種類がありますが、いずれも使用回数に上限はありません。1日に何度お使いいただいても大丈夫です。お口の乾燥感が気になった時には、いつでも使っていただき、お口を潤すようにしてください。
ポラリス歯科・矯正歯科では、お口が乾きやすいと感じていらっしゃる方の診療も行っております。 お口の乾燥でお悩みの際は、お気軽にポラリス歯科・矯正歯科でご相談ください。