小児歯科のレントゲンって安全なの?

小児歯科のレントゲンって安全なの?
 

歯科治療においてレントゲンは重要な役割を果たします。しかし、お子さんの成長や発達に悪影響があるのではないかと、不安を感じる保護者の方も多いのではないでしょうか。

 

そこで今回は、小児歯科でのレントゲン撮影が本当に安全なのか、お子さんの成長に影響があるのか等について、分かりやすく解説します。

小児歯科で撮るレントゲン写真の種類

小児歯科で撮るレントゲンは、お子さんの歯や顎の成長・発達、歯の健康状態を正確に把握するために使用されます。レントゲン写真の種類は主に以下のものがあります。

パノラマレントゲン写真

パノラマレントゲン写真
 

パノラマレントゲン写真は、お口全体の歯、顎の骨、周囲の組織を一枚に収めるレントゲン撮影のことです。パノラマ写真のように広範囲を一度に捉えるため、この名前がついています。全ての歯が写るため、小さな虫歯も見逃してしまう心配がありません。

 

さらに、パノラマレントゲン撮影では、まだ生えてきていない永久歯の位置や本数、埋伏歯(まいふくし:歯ぐきの中に埋まっている歯)の有無まで把握することが可能です。これにより、将来的な歯並びや噛み合わせの問題を予測し、予防的な措置を検討できます。

 
パノラマレントゲンは、顔の周りをレントゲン装置が20秒ほどでゆっくりと回転しながら撮影
 

撮影は約20秒程度で終わり、痛みもなく安全な検査です。顔の周りをレントゲン装置がゆっくりと回転しながら撮影するため、3歳以下のお子さんや落ち着きのない方は、若干難しい場合があります。

デンタルレントゲン写真

デンタルレントゲン写真
 

パノラマレントゲン写真がお口全体を広く写すのに対し、デンタルレントゲン写真は、数本単位の歯やその周辺組織に焦点を絞って撮影します。

 

たとえば、パノラマレントゲン写真で虫歯の疑いがあるという診断がついた場合、デンタルレントゲン写真で虫歯の進行度合い、歯の神経の状態、歯の根の周りの骨の状態などを詳しく確認できます。

 

通常は、パノラマ撮影で気になる箇所が見つかった際に追加で行われますが、定期検診や治療効果の確認時にも活用されています。

 

また、このタイプのレントゲンは短時間で撮影ができるため、赤ちゃんでも保護者が支えることで撮影可能です。なお、デンタルレントゲンには以下のような撮影方法があります。

平行法パノラマレントゲン写真よりも拡大された画像が得られる撮影方法。フィルムが小さいため、子どもから大人まで幅広く使用できます。
咬翼法(こうよくほう)上下の歯を同時に撮影するもので、特に歯と歯の間にできた虫歯を確認に適しています。バイトウィングレントゲンとも呼ばれます。
二等分法歯の実長に近い像が得られる撮影方法です。歯の根の長さを正確に測る必要がある場合に用いられます。

デンタルレントゲンは被ばく量も微量で、必要最小限に抑えられているため、安全性の高い検査方法と言えるでしょう。

セファロレントゲン写真

セファロレントゲン写真
 

歯並びの矯正治療を始めるにあたって、セファロレントゲン写真という特別なレントゲン撮影を行うことがあります。

 

セファロレントゲンとは、頭を横から撮影したレントゲン写真で、頭蓋骨や顔の骨の大きさ、顎や歯の位置関係を把握するために撮影されます。

 

セファロレントゲン写真は、一般的な歯科検診で撮影するレントゲン写真とは異なり、虫歯のチェックなどには用いられません。矯正治療の計画や治療結果の確認、成長予測に必要な情報を得るためのものです。

CT画像

CT画像
 

お口の中の状態を立体的に把握するために、CT画像を撮影することがあります。CT画像を撮影すると、パノラマレントゲン写真やデンタルレントゲン写真では分からない、歯や顎の骨の内部構造、神経や血管の位置などが確認できます。

 

また、まだ生えてきていない歯や歯根(歯の根っこ)がどちらを向いているのか、生えてこない歯が何かに邪魔されていないかなどを知ることも可能です。

 

矯正治療親知らずの抜歯、インプラント治療など、より精密な診断と治療計画を立てる際に使用されます。

手根骨(しゅこんこつ)レントゲン写真

手根骨レントゲン写真
 

お子さんの矯正治療では、手首の骨を撮影し、骨の成熟度合いを測る検査を行うことがあります。骨年齢という言葉をご存知でしょうか?これは、実際の年齢とは別に、骨の成長度合いから見た年齢のことです。

 

お子さんの成長には個人差があります。骨年齢を調べることで、顎の骨の成長がいつ頃ピークを迎えるのか、矯正治療に適したタイミングはいつなのかを予測できます。

レントゲン写真を撮る時の「放射線」とは?

レントゲン写真を撮る時の「放射線」とは?
 

レントゲン撮影を不安に思われる方は、その放射線量について気にしていらっしゃるのではないでしょうか。

 

そもそも放射線とは、目に見えないエネルギーの波と粒子の流れのことです。放射線には、自然界から発生するものや、人工的に生成されるものがあり、実に様々な種類があります。

 

放射線は、実は私たちの日常生活においても身近な存在であり、医療、工業、研究などの多くの分野で利用されています。代表的なものとして、以下の2つをご紹介しましょう。

電磁放射線

電磁放射線
 

電磁放射線とは、電磁波の形態で放出されるエネルギーの一種です。がん治療で用いられるガンマ線や、レントゲン写真で用いられるX線といったように、色々な種類があります。

 

また、よく耳にする紫外線や赤外線、電波も電磁放射線の一種です。しかし、エネルギーが低いため、放射線と呼ばれることは多くありません。

粒子放射線

粒子放射線
 

粒子放射線とは、高いエネルギーを持った粒子の流れです。ラドン温泉など、自然界にも存在するアルファ線や、がん治療で用いられるベータ線などがあります。

 

粒子放射線は、使い方によっては私たちの生活に役立ちますが、取り扱いを間違えると危険な場合もあります。

放射線の健康への影響

放射線の健康への影響
 

放射線は自然界にも存在し、私たちは暮らしているだけで放射線を浴び続けています。たとえば、太陽の光を浴びたり、地面を歩いたりするだけでも微量の放射線を浴びているのです。これは自然放射線と呼ばれていて、宇宙や地面、食べ物など、多くの物質から発生しています。

 

自然放射線は、ごく微量なので私たちの健康に影響はありません。しかし、人為的に短期間に大量の放射線を浴びると、人体に影響を与える可能性があります。

 

そのため歯科治療では、患者さんにできるだけ少ない量の放射線で検査や治療ができるよう、様々な工夫を施しているのです。

歯科レントゲン撮影の放射線の特徴

放射線量が少ない

歯科レントゲン撮影の放射線の特徴:放射線量が少ない
 

先ほども触れたように、レントゲン撮影は放射線が心配と思われる親御さんもいらっしゃるかもしれません。しかし、小児歯科で使用されるレントゲンの放射線量は非常に少なく、自然界から日常的に受けている放射線量と比較してもごくわずかです。

 

近年、多くの歯科医院ではフィルムでなく、デジタルレントゲンが導入されており、従来のレントゲンに比べて放射線量がさらに少なくなっています。

飛行機旅行と比べても…

飛行機旅行と比べても…
 

実は、飛行機で旅行しても放射線を浴びるのをご存知でしょうか。飛行機は地上1万メートルの高度で飛行しますが、地上よりも宇宙に近くなっているため、放射線の影響をより多く受けることになるのです。

 

もちろん、飛行機で旅行しても、被ばく量は安全な水準ですが、たとえば、飛行機で東京からニューヨークへ往復した際の被ばく量は約0.1ミリシーベルト(mSv)になります。

 

一方、デンタルレントゲン写真を1枚撮影する際は、約0.005ミリシーベルト(mSv)にしかなりません。20枚撮影したらニューヨークへ往復した被ばく量となります。

 

また、パノラマレントゲン写真は1枚あたり約0.01〜0.02ミリシーベルト(mSv)セファロレントゲン写真は1枚あたり約0.02ミリシーベルト(mSv)程度です。

 

さらに、被ばく量を少なくしている機種や、子供を撮影するための設定もあるため、より被ばく量を少なくできるのです。

局所的な放射線

歯科レントゲン撮影の放射線の特徴:局所的な放射線
 

歯科医院で行うレントゲン撮影は、お口の中だけを撮影するので、体全体に放射線が行き渡ることはありません。特に、小児歯科におけるレントゲン撮影では、必要な部分だけを撮影するため、放射線を浴びる範囲はごくわずかです。

 

また、撮影時には鉛でできたエプロンや首当てを使用することで、放射線が他の部位に当たらないように保護します。

 

念を入れて保護をきちんと行いますが、実は歯科用レントゲンから出る放射線は、ほとんど散らばることがないので、撮影する部分以外に影響を与える心配はありません。

繰り返しのレントゲン撮影について

繰り返しのレントゲン撮影について
 

必要のないレントゲン撮影は避けるべきですが、歯科医師は慎重に判断し、最小限の撮影回数で最大の効果が得られるよう配慮しています。

 

むしろ、適切な時期のレントゲン撮影を避けることで、より大きなリスクが生じる可能性があります。たとえば、レントゲン写真でしか分からないような虫歯や口腔内の異常が進行すると、お子さんの全身の健康にも影響が出る可能性があるのです。

 

歯科のレントゲン撮影に用いられる放射線の量は非常に少ないため、成長への悪影響はほとんどありません。通常の診察で行われる範囲であれば、健康に影響を及ぼすリスクは極めて低いと考えられます。

 

むしろ、お話ししたように、必要なレントゲン撮影を行わずに適切な診断と治療が遅れることの方が、お子さんの健康にとって大きなリスクになることがあります。それでもレントゲン撮影に不安がある場合は、歯科医師に相談してみましょう。

お子さんのお口の健康を守るため、定期的な検査をおすすめします

お子さんのお口の健康を守るため、定期的な検査をおすすめします
 

今回お伝えしたとおり、小児歯科でのレントゲン撮影は、放射線量が非常に少ないため、安全性が高いものです。むしろ定期的な検診時のレントゲン撮影は、お口の健康を守るための重要な予防措置の一つとして考えていただければと思います。

 

もちろん、レントゲン検査は必要に応じて行われるものであり、検査が必要な場合は、その理由やメリット、安全性についてわかりやすく説明しますのでご安心ください。

 

ポラリス歯科・矯正歯科では、お子さんの気持ちに寄り添いながら、丁寧で安心できる治療を提供することに努めています。お子さんの歯とお口の健康に関するお悩みやご不安があれば、お気軽にポラリス歯科・矯正歯科にご相談ください。