お子さんの口腔機能発達不全症とは?

お子さんの口腔機能発達不全症とは?
 

口腔機能発達不全症(こうくうきのうはったつふぜんしょう)」という病名は、なかなか聞いたことがない方も多いかもしれません。これは、生まれつき病気ではないのに、お子さんのお口の機能が十分に発達しなかったり、上手く使えなかったりする状態のことです。

 

口腔機能発達不全症は、放置すると身体の成長や言葉の遅れといった問題を引き起こす可能性があります。虫歯歯周病ほど知られてはいませんが、お子さんの健康に関係する重要な問題です。

 

そこで今回は、口腔機能発達不全症の原因や症状・治療法、予防法などについて解説します。

お口の機能の発達を妨げてしまう癖、気になる症状

お子さんのお口の機能の発達を妨げてしまう癖、気になる症状
 

私たちのお口は「食べる」「話す」「飲み込む」「呼吸する」「表情をつくる」といった役割があります。

 

しかし、以下のような癖がお口の機能(口腔機能)の発達を妨げてしまうことがあります。

  • 口で呼吸する癖(口呼吸)
  • 指しゃぶり
  • 舌を前に突き出す癖
  • 猫背
  • 頬杖

お口の機能が十分に発達しないと、食べ物がうまく食べられず、栄養不足や成長の遅れ、免疫力の低下を招いてしまいます。

 

また、話す機能が遅れると、言葉の発達が遅れて学習に影響が出ることに加え、学校で友達の輪に入れず心の健康に影響することもあるでしょう。

 

口腔機能発達不全症は、大人になってからでの改善が難しいため、早めに見つけて癖の修正や治療をしてあげることが大切です。

お子さんのこんな症状に心当たりはありませんか?

お子さんのこんな症状に心当たりはありませんか?
 
  • 指しゃぶりなどの癖がなかなか治らない
  • いつもお口がぽかんと開いている(ぽかん口についてはMFTのコラムで詳しく解説しています)
  • 哺乳・授乳回数や離乳食の量が安定しない
  • 食べ物がうまく噛めない・飲み込めない
  • 食べ物を丸飲みしている・食べこぼしが多い
  • 発音がはっきりしない・言葉の発達が遅い
  • いつも口で呼吸している

上記の症状に当てはまる場合は、口腔機能発達不全症の疑いがあります。

3つの口腔機能発達不全症と検査方法

口腔機能発達不全症と診断する際は、以下の3つの機能をチェックします。

  1. 食べる機能
  2. 話す機能
  3. その他の機能

これらの機能について、検査して評価を行い、機能発達不全かどうかを判定します。以下でそれぞれの症状と検査方法を紹介していきましょう。

食べる機能発達不全

食べる機能発達不全
 

「食べる機能」の発達不全は、食事がうまくできない状態です。

 

赤ちゃんの場合は母乳やミルクをうまく飲めない、幼児の場合は食べ物がうまく食べられない・飲み込めない・よく噛まずに丸呑みするなどの症状が現れます。

 

また、食事に時間がかかる場合は、虫歯や歯並びの悪さなど、お口の中の状態が原因である可能性もあります。

食べる機能発達不全の検査方法

授乳期の赤ちゃんは歯・唇・歯ぐき・舌などの形や動きを観察し、授乳の時間や回数、量をチェックします。

 

離乳後は実際に食事をしてもらい、舌の動きや噛み方、飲み込み方を観察します。

話す機能発達不全

話す機能発達不全
 

話す機能の発達不全は、年齢に合った正しい発音ができていないことを指します。

 

例えば、唇がうまく閉じられず、言葉がはっきりしないなどといった症状です。この場合の原因は、お口周りの筋肉の問題、鼻の病気などが挙げられます。

話す機能発達不全の検査方法

授乳期の赤ちゃんの場合、唇が正しく閉じられるか確認します。離乳後はそれに加えて、舌の裏側にある舌小帯(ぜつしょうたい)が短かすぎないかチェックします。舌小帯が短すぎると舌の動きが悪くなることがあるからです。

 

また「パ」「タ」「カ」「ラ」「サ」行の発音をチェックし、言い間違えがないか、音がはっきり出ているかを検査します。

その他の機能発達不全

その他の機能発達不全
 

その他の機能不全は、口呼吸・痩せすぎ・肥満などが挙げられます。特に口呼吸は、お口の中を乾燥させ、虫歯や歯肉炎を引き起こしやすくします。普段から口で呼吸をしていたり、寝ている間にいびきをかいていたりする場合は注意が必要です。

 

口呼吸のリスクについては各コラムでご紹介してきましたが、大人でも口呼吸によって唾液が減少し、ドライマウスになると口腔環境が悪化しますので、ご注意ください。

その他の機能発達不全の検査方法

口呼吸の有無や頻度をチェックします。これに加え、身長や体重を測定し、カウプ指数(発育状態の指標)やローレル指数(肥満の指標)などを用いて、発育の状態を確認します。

口腔機能発達不全症の治療方法

口腔機能発達不全症の治療方法
 

口腔機能発達不全症の治療は、歯科医師に加え、言語聴覚士や理学療法士といった専門家が連携し、治療やトレーニング、指導など行い「食べる」「話す」機能の改善を目指します。

 

治療の対象は主に17歳までのお子さんです。もし、お口以外の原因で発達が遅れている場合は、医科の専門医に診てもらうこともあります。

治療の流れ

口腔機能発達不全症の治療の流れ
 

治療は、歯科医院と自宅でのトレーニングを組み合わせて行うのが一般的です。治療開始後は月1回のペースで歯科医院を受診し、トレーニングがどの程度行えているか、お口の機能の変化を確認します。

 

そして今後の課題や自宅での取り組み方など、相談しながら以下の流れに沿って進めていきます。治療はお子さんだけの頑張りだけでなく、ご家族の理解と協力が必要です。

①生活指導

姿勢や食事の仕方など、改善できるポイントをアドバイスします。

②お口の環境を整える

虫歯治療や舌小帯の調整など、必要な治療を行います。

③お口の使い方の訓練

舌の動かし方や呼吸法、唇を閉じる練習などトレーニングします。

口腔機能発達不全症を予防するには?

口腔機能発達不全症を予防するには?
 

「口腔機能発達不全症って予防できるの?」と思った方もいらっしゃるかもしれません。実は、口をしっかり閉じられるようになることが予防につながります。

 

口を閉じる力を専門用語では口唇閉鎖力(こうしんへいさりょく)といい、お口の基本的な機能を支えています。

 

以下は、口唇閉鎖力を鍛えられるトレーニングの例です。

  • 指で唇の周りを軽くつまんで上下に動かす
  • ストローや割り箸などを唇で挟んで、落とさないようにキープする
  • ボタンプル(前歯と唇の間に紐をつけたボタンを挿入し、紐を引っ張ってボタンが口の外に出ないように唇に力を入れる。詳しくはMFTのコラムでも解説しています)
  • 専門器具を使ったトレーニング

トレーニングの方法や回数は歯科医師のアドバイスを受けるようにし、無理のない範囲で行うことが大切です。

お子さんのお口の機能に気になることがあれば、歯科医院でご相談を

お子さんのお口の機能に気になることがあれば、歯科医院でご相談を
 

今回は、お口の機能がうまく使えない状態である口腔機能発達不全症について解説しました。口腔機能発達不全症は、口呼吸や指しゃぶり、舌の癖が原因となっていることもあります。大人になってからの治療は困難になることが多いため、早めの対処が重要です。

 

ポラリス歯科・矯正歯科が所属する医療法人社団 千仁会では、各科専門歯科医が連携し、お子さんのお口の機能を育てるお手伝いをいたします。「食べにくそうにしている」「言葉がはっきりしない」など、お子さんのお口の機能にお悩みがある場合は、お気軽にポラリス歯科・矯正歯科にご相談ください。