治療に欠かせない歯科材料『コンポジットレジン』って?

治療に欠かせない歯科材料『コンポジットレジン』って?
 

皆さんは、「歯科治療で使う材料」といえば、何をイメージしますか?
金歯や銀歯などの金属でしょうか。あるいは、白さが際立つセラミックを思い浮かべるかもしれませんね。

 

もちろんこれらの素材もメジャーですが、金属やセラミック以上によく使われているのが、コンポジットレジンというプラスチック材料です。

 

ポラリス歯科・矯正歯科のコラムでもよく登場するコンポジットレジンですが、実は「コンポジットレジンがないと歯科治療はできない」といっても過言ではないくらい、広く利用されている歯科材料なのです。

 

今回は、そんなコンポジットレジンの用途や特徴について、詳しくご紹介します。

コンポジットレジンとは?

コンポジットレジンとは?
 

コンポジットレジンは、ベースレジンとフィラーという粉末を主成分としたプラスチック材料です。例を挙げると、上の写真のような充填器の中に材料が入っており、専用の光照射器で特殊な波長の光を当てると固まるタイプや、粉と液を混ぜ合わせると固まるタイプがあります。

 

被せ物や詰め物の接着剤として使われることもあり、現在の歯科治療には欠かせない歯科材料の一つです。

コンポジットレジンの用途

歯科治療でのコンポジットレジンの用途は様々ですが、比較的多いのが以下の治療法です。

詰め物・被せ物

虫歯治療を行った際、歯の詰め物・被せ物としてコンポジットレジンがよく用いられます。

詰め物

虫歯の進行状況は、虫歯の深さからC1~C4の4段階で評価されています。下の図をご覧ください。

虫歯の進行,C0~C4

C1は歯の最も外側のエナメル質にのみ、C2はエナメル質の下の象牙質の浅いところまで進んだ虫歯です。光で固まるタイプのコンポジットレジンが、C1、C2の一部の虫歯治療に使われています。

被せ物(前歯)

レジン前装冠
 

保険診療の被せ物は、長らく銀歯が主流でした。銀歯は頑丈で持ちが良いのですが、見た目に問題があり、そのままでは前歯に使用するのは躊躇されます。

 

そこで、銀歯の表面にコンポジットレジンを貼り付けて、目立ちにくくしたレジン前装冠というタイプの被せ物が使われています。

被せ物(CAD/CAM冠)

CAM/CADクラウン
 

近年、銀歯に代わる新世代の被せ物として、CAD/CAM冠という被せ物が注目されています。これは、コンポジットレジンの塊を、専用の工作機械で削り出して作った被せ物です。

 

保険診療の被せ物ですが、金属を一切使わないので目立ちにくいという特徴を持っています。上記以外にも様々な素材のものがありますので、興味のある方は詰め物・被せ物ページをご参照ください。

入れ歯

入れ歯治療でも、部分入れ歯総入れ歯問わず、コンポジットレジンは欠かせません。コンポジットレジンが使われている入れ歯の代表は、レジン床義歯(しょうぎし)という入れ歯です。

 
レジン床義歯
 

レジン床義歯の人工歯を支えているピンク色の部分にコンポジットレジンが利用されていますし、人工歯自体もコンポジットレジンで作られたものがあります。

 
金属床義歯(きんぞくしょうぎし)、メタルデンチャーの総入れ歯
 

金属床義歯(きんぞくしょうぎし)、メタルデンチャーでも、歯肉を表現するピンク色の部分はやはりコンポジットレジンです。

矯正治療

保定装置、リテーナー
 

矯正治療でも子供向けの矯正装置などを中心に、コンポジットレジンが使われています。また、矯正治療が終わった後に、後戻りを防ぐ保定装置(ほていそうち)、リテーナーにコンポジットレジンが利用されています。

コンポジットレジンのメリット

以上のように、様々な治療に用いられるコンポジットレジンですが、ここからは具体的にどんなメリットがあるか、お話ししていきましょう。

白く、目立ちにくい

コンポジットレジンは白く、目立ちにくい
 

虫歯治療に使うコンポジットレジンの色は、歯の色に近い白色です。色の種類の選択肢はそれほど多くないので、歯と全く同じ色にするのは難しいのですが、多くの場合、歯に近い色を選ぶことができます。そのため、虫歯治療に使った場合、比較的目立ちにくく治療することができます。

保険診療が可能

コンポジットレジンは保険診療が可能
 

コンポジットレジンは、保険診療の適用を受けています。保険診療では審美的な治療は認められていませんが、コンポジットレジンを使えば、保険診療でも目立ちにくい治療を受けることができます。

治療が1日で終わることも

コンポジットレジンを用いれば、治療が1日で終わることも
 

コンポジットレジンの中には、歯に接着性のあるタイプがあります。接着性のあるコンポジットレジンで治療できる範囲の虫歯なら、削ったその日のうちにレジン充填を行えるので、治療が1日で終わります。

コンポジットレジンのデメリット

メリットが多いコンポジットレジンですが、もちろん短所がないわけではありません。今度はコンポジットレジンのデメリットをご説明しましょう。

光沢感がない

光沢感がない
 

先ほどお話ししたとおり、虫歯治療に使うコンポジットレジンの色は歯に似た白色ですが、似ているのは色合いだけで、本物の歯に備わっている光沢感がありません。

 

光沢感がないので、コンポジットレジンで治療した歯の仕上がりは、のっぺりとした不自然な白さになってしまいます。より美しい白さで自然な仕上がりを求める方には、自費診療となりますが、セラミック系の被せ物が候補になるでしょう。

 

ジルコニア・オールセラミックやe-maxなど、審美性に富んだセラミッククラウンについては、セラミッククラウンの種類のコラムで詳しく解説しておりますので、興味のある方はご参照ください。

変色する

コンポジットレジンは、お口の中の水分や、紫外線を受け続けることで、経年劣化が生じます。そして、白さが少しずつ失われ、黄色く変色していきます。

プラーク(歯垢)がつきやすい

プラーク(歯垢)がつきやすい
 

コンポジットレジンは決してツルツルではなく、その表面には微細な凹凸があります。時間の経過とともに、成分のフィラーがとれていくので、凹凸は徐々に大きくなります。

 

この凹凸がプラークの温床になってしまいます。歯周病治療のページでお伝えしているように、プラークは細菌の塊であり、放置すると歯茎が炎症を起こし、歯周病になってしまいます。コンポジットレジンで処置をした後も、しっかりとプラークコントロールを心がけましょう。

コンポジットレジンの特性を活かし、患者さん一人一人に合った治療を

コンポジットレジンの特性を活かし、患者さん一人一人に合った治療を
 

今回は、歯科治療に大変よく用いられるコンポジットレジンについて紹介しました。ポラリス歯科・矯正歯科でも使わない日はないと言ってもいいくらい、毎日のように使用しています。

 

ご紹介したとおり、コンポジットレジンにはメリットもあればデメリットもあります。今回のコラムで、コンポジットレジンの特性や用途をご理解いただけたのではないでしょうか。

 

もちろん一番大切なのは、処置を行う箇所や状態に応じた歯科材料を使い、最適な治療を行うことです。ポラリス歯科・矯正歯科では、患者さんとしっかり話し合い、一人一人に合った治療を提供いたしますので、歯科治療で使う材料について質問のある方や、他の選択肢も知りたいという方は、お気軽に当院でご相談ください。