歯茎の形や状態がおかしい?…歯肉増殖症とは?

歯茎の形や状態がおかしい?…歯肉増殖症とは?
 

皆さんは歯茎が腫れて盛り上がる歯肉増殖症(しにくぞうしょくしょう)をご存じですか?聞き慣れない病名かもしれませんが、薬の副作用や遺伝など、様々な原因で起こりうる病気です。

 

放置すると見た目の問題だけでなく、歯周病のリスクを高めるなど、悪影響を及ぼすこともあります。今回は、歯肉増殖症の原因や症状、歯周病との違いについて解説します。

歯肉増殖症(しにくぞうしょくしょう)とは

歯肉増殖症は、歯肉肥大とも呼ばれ、簡単に言うと歯茎が腫れて盛り上がってしまう状態のことです。腫れ方は人それぞれで、一部分だけの場合もあれば、広範囲に広がってしまうこともあります。感染症ではないため、ほかの人にうつる心配はありません。
歯肉増殖症は、主に3つの分類に分けられます。

  1. 炎症性歯肉増殖
  2. 薬物性歯肉増殖症
  3. 遺伝性歯肉線維腫症(いでんせいしにくせんいしゅしょう)

以下でそれぞれ詳しく見ていきましょう。

1.炎症性歯肉増殖

炎症性歯肉増殖
 

歯茎が腫れて痛い ~その原因と治療法~のコラムで詳しく解説していますが、歯磨きが不十分だと歯の周りにプラーク(歯垢)という細菌のかたまりができてしまいます。このプラークが原因で歯茎に炎症が起こり、腫れて肥大化したものが炎症性歯肉増殖症です。

 

歯茎が腫れるため、歯と歯茎の間に歯周ポケットができてしまいます。そこに汚れが入り込んでしまうと、さらに炎症を引き起こすという悪循環を招いてしまうことがあります。

 
口呼吸
 

また、口呼吸も歯茎の炎症を引き起こす原因の一つです。口で呼吸すると、口の中が乾燥しやすくなり、唾液の洗浄効果が弱まって、プラークが増えやすくなってしまいます。

 

基本的には一時的なものですので、汚れをしっかりと除去すれば、元の状態に回復していくことが多い症状です。

2.薬物性歯肉増殖症

薬物性歯肉増殖症
 

歯肉増殖症の多くは、薬の副作用によって引き起こされます。これを薬物性歯肉増殖症と言います。特に以下は、歯肉増殖を引き起こしやすいことが知られている薬です。

  • 抗てんかん薬(例:フェニトイン)
  • 高血圧薬(例:ニフェジピン)
  • 免疫抑制薬(例:シクロスポリン)

歯茎が増殖することによって、上述の炎症性歯肉増殖と同様、歯と歯茎の間の歯周ポケットができやすくなります。そしてその部位に汚れが溜まると、炎症を引き起こします。この場合は、まず汚れを落とし、口の中を清潔に保つことが大切です。

 

もし、上記で紹介した薬を飲んでいる方で「最近、歯茎が腫れてきたな…」と感じたら、歯科医院で相談しましょう。

3.遺伝性歯肉線維腫症(いでんせいしにくせんいしゅしょう)

遺伝性歯肉線維腫症
 

歯肉増殖症の中には、遺伝的な要因で起こるケースもあります。これは遺伝性歯肉線維腫症(いでんせいしにくせんいしゅしょう)と呼ばれ、比較的珍しい病気です。

 

他の歯肉増殖症と同じように、歯茎が腫れて盛り上がってしまうのが特徴です。ただし、遺伝性歯肉線維腫症はプラークとは関係なく起こります。

 

遺伝性歯肉線維腫症は再発する可能性があり、その場合は、増殖した歯茎を切除する外科的な処置が必要になることもあります。

歯肉増殖症と見分けがつきにくい「エプーリス」とは

エプーリス
 

歯肉増殖症と似たものにエプーリス(epulis)というものがあります。エプーリスは、歯茎の一部に生じるコブのような病気です。一見すると腫瘍のようにも見えますが、良性の限局性腫瘍であるため、基本的に心配はありません。

 

エプーリスにはいくつかの原因があり、慢性的な刺激やホルモンバランスの変化により生じることがあります。

 

中でも妊娠中に起こる妊娠性エプーリスはよく知られています。妊娠早期に見られますが、分娩後に小さくなったり、なくなったりすることが多く、症状は一過性のものと言えるでしょう。

歯肉増殖症の治療

歯肉増殖症の治療は、基本的には歯周病と似たような治療を行います。まず大切なのは、毎日の歯磨きで歯垢をしっかりと取り除くことです。それに加えて、歯科医院で歯石や歯垢の除去を行います。ただし、歯肉の状態によっては外科処置が必要になることもあります。

軽度の歯肉増殖症の場合

軽度の歯肉増殖症の治療:毎日の歯磨きをいつも以上に丁寧に行い、歯科医院でPMTCを受けて歯石除去をしてもらいましょう。
 

歯肉増殖症では口腔内の環境を整えることが重要です。歯茎が腫れるとどうしてもその部位に汚れがつきやすく、そこから炎症を引き起こしてしまいます。

 

ですので、毎日の歯磨きをいつも以上に丁寧に行うようにしましょう。歯ブラシだけでなく歯間ブラシやフロスなども使用することが大切です。

 

また、歯茎の状態によって歯石なども付着しやすくなります。歯石は、歯磨きだけでは落とせない頑固な汚れなので、歯科医院で専用機材によるPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)を受け、歯石除去をしてもらいましょう。

中等度から重度の歯肉増殖症の場合

中等度から重度の歯肉増殖症の治療:歯茎を切除する外科処置
 

歯茎の腫れがひどく、歯ブラシや歯石除去などで汚れが取りにくい場合は、歯茎を切除する外科処置を行います。

 

麻酔をした後に、腫れて大きくなった歯茎の一部を切除し、歯と歯茎の間にできた深い溝に汚れが溜まりにくい状態にします。ただ、歯肉増殖症の原因や状態によっては、手術後も歯茎が再び腫れてしまう可能性があります。

薬物性歯肉増殖症の場合

薬物性歯肉増殖症の治療:投薬を中止したり、別の薬に変えたる
 

薬の副作用で歯茎が腫れてしまった場合は、その投薬を中止したり、別の薬に変えたりすることで症状が改善されることがあります。

 

ただ、薬の種類によっては急に使用を止めてしまうと体に悪影響が出てしまう可能性もあるため、必ずかかりつけ医と相談して、薬の変更が可能かどうかを一緒に検討してください。

 

もし、薬を変えるのが難しい場合は、先ほどお話しした、歯茎の一部を切除する外科的な処置を行うこともあります。

歯肉増殖症と歯周病の違い

歯肉増殖症の他に、歯茎が腫れる代表的な病気としては、コラムでも多く取り上げてきた歯周病があります。多くの方が歯周病はご存知だと思いますが、歯肉増殖症と歯周病には、原因や症状に違いがあるのです。以下で解説していきましょう。

歯肉増殖症と歯周病の原因

歯肉増殖症と歯周病の原因
 

歯周病は、歯磨きが不十分で歯垢(プラーク)が溜まってしまい、それが原因で炎症が起こり、歯茎が腫れる病気です。歯周病が進行すると、歯を支えている骨まで溶けてしまい、最終的には歯が抜け落ちてしまうこともあります。

 

歯肉増殖症は、薬が主な原因となり、歯茎の中の細胞が増え過ぎて、歯茎の腫れを引き起こします。ひどい場合には、歯が歯茎に埋もれてしまうこともあります。ただ、歯肉増殖症では、歯周病のように周りの組織が破壊されてしまうことはありません。

歯肉増殖症と歯周病の見た目

歯肉増殖症と歯周病の見た目
 

歯肉増殖症と歯周病では見た目にも違いがあります。歯肉増殖症の場合は、歯茎の細胞が増殖してしまうため、歯茎が張って硬くなるのが特徴的です。また、歯茎がかなり盛り上がり、歯が埋もれるような見た目になります。

 

一方、歯周病では歯茎が腫れると赤黒くなり、熟れたトマトのようにブヨブヨになります。

歯肉増殖症と歯周病の治療方針

歯肉増殖症と歯周病の治療方針
 

治療方針については、両者に大きな違いはありません。歯肉増殖症でも歯周病でも、お口の中を清潔に保つことが第一であり、どちらも歯垢(プラーク)をしっかり除去することが基本となります。また、歯茎の腫れがひどい場合には、歯肉増殖症でも歯周病でも、外科的な処置が必要になることがあります。

 

ただ、原因のところでお伝えしたように、歯肉増殖症は歯周病とは異なり、基本的には歯を支える骨(歯槽骨:しそうこつ)が溶けてしまうことはありません。しかし、お口の中が不衛生な状態が続くと、歯肉増殖症から歯周病になってしまう可能性があります。

 

ですから、歯肉増殖症だからといって安心せず、歯周病と同じように、日頃から丁寧な歯磨きと定期的な歯科検診を心がけることが大切です。

歯肉増殖症のお悩みもポラリス歯科・矯正歯科に

歯肉増殖症は聞き慣れない疾患かもしれませんが、今回のコラムでご理解いただけたでしょうか。歯肉増殖症は薬が原因であることが多いのですが、その予防や治療で一番大切なのは、歯周病や虫歯と同様に、やはり毎日の歯磨きで歯垢(プラーク)をしっかり除去することです。

 
口腔ケアは単なる歯の清掃ではなく、より良い日常を送るために、お口の環境を整え、今ある機能を最大限活用できるようにする支えであると、ポラリス歯科・矯正歯科のスタッフは認識しています。
 

もちろん、ご自身でのセルフケアだけでなく、定期的に歯科医院を訪れて予防歯科を受診し、プロフェッショナルケアを行うことを忘れないでください。

 

今回お伝えした歯肉増殖症の症状に、もし心当たりがある場合は、痛みがないからといって放置せず、歯科医師に相談することをおすすめします。

 

ポラリス歯科・矯正歯科には、歯肉増殖症をはじめ、様々なお口の悩みに対応できる医療法人社団 千仁会の専門医が多く在籍しています。歯茎の腫れが心配な方や、歯肉増殖症について気になる方も、ポラリス歯科・矯正歯科にどうぞお気軽にご相談ください。