歯の治療全般
舌が痛いのは病気のサイン?
舌は日常的に気にして見ることはありませんが、口内炎ができたり、熱いものを食べて軽い火傷をしたりすると気になるものです。とはいえ、そのような痛みは一時的なもので、すぐに治るのであまり心配しなくても良いでしょう。
ただ、舌が痛むのは全身的な病気が原因のこともあり、放置すると危険な場合もあります。そこで今回は、舌の痛みを引き起こす疾患や対処法について解説します。
舌の構造
まずは舌について確認しましょう。舌は複数の筋肉が集まってできた器官で、食べる・味わう・飲み込む・話すといった機能があります。
舌の筋肉は二つに大別され、一つは舌の位置を変える筋肉、もう一つは舌の形を変える筋肉になります。これらの筋肉の働きにより、スムーズに食べ物を噛んだり、飲み込んだり、言葉を話すことができます。
舌乳頭の種類
舌には味を感じる細胞が集まっている場所があります。それが味覚障害のコラムでもお話しした味蕾(みらい)と呼ばれる小さな器官です。味蕾は、舌の表面にある小さな突起、舌乳頭(ぜつにゅうとう)に多く存在しています。なお、舌乳頭には以下の種類があり、それぞれ特徴が異なります。
- 有郭乳頭(ゆうかくにゅうとう):舌の付け根にあり、1つの乳頭に数百から数千の味蕾が存在している
- 葉状乳頭(ようじょうにゅうとう):舌のふちの部分にあり、1つの乳頭に十数個の味蕾が存在している
- 茸状乳頭(じじょうにゅうとう):舌の前方にあり、1つの乳頭に1~数個の味蕾が存在している
- 糸状乳頭(しじょうにゅうとう):舌全体にあり、味蕾は存在せず感覚を感知する
舌の奥がボコボコしていても異常ではありません
舌の付け根付近には、上述の有郭乳頭や、舌扁桃(ぜつへんとう:リンパ組織)があります。これらは、イボのように見えるため、患者さんの中には悪性腫瘍を心配される方もいます。しかし、正常な形態のため心配する必要はありません。
ただし、赤みや白くなっている、形が異常に大きい、痛みがある場合などは、歯科医院に受診するようにしましょう。
舌が痛くなるのは病気のサインなの?
冒頭でも触れたとおり、舌の痛みは、口内炎のようにお口の中のトラブルが原因で起こることもあり、必ずしも病気の兆候とは限りません。
ただし、以下のような症状がある場合は、何らかの病気が原因の可能性があります。注意してください。
- 舌がヒリヒリ・ピリピリする
- 味がわからない
- 舌の色がいつもと違う
- 痛みなどの症状が1週間以上続く
心当たりがある場合は、早めに歯科医師に相談し、原因を調べてもらいましょう。
舌の痛みを引き起こす全身の病気と対処法
では実際にどのような病気の場合、舌の痛みを引き起こすのでしょうか。各々の対処法を含め、以下で説明していきましょう。
プランマービンソン症候群
プランマービンソン症候群は、鉄分が不足することで起こる鉄欠乏性貧血が発症した際に、まれに起こる病気です。舌がヒリヒリと痛む舌炎、口角が切れる口角炎、食べ物が飲み込みにくくなる嚥下(えんげ)障害などを生じるのが特徴です。
プランマービンソン症候群は、月経や妊娠・出産などにより発症することがあります。また、胃を手術した方も注意が必要です。対処法としては、プランマービンソン症候群は鉄分不足によって発症するため、鉄剤を服用することになります。
ハンター舌炎・悪性貧血
ハンター舌炎や悪性貧血は、ビタミンB12が不足することで起こる病気です。これらの栄養素が不足すると、舌の細胞がうまく作られなくなり、舌の痛みや違和感などを生じます。
また、胃の手術後はビタミン12を吸収しにくくなるため、注意が必要です。対処法としては、不足しているビタミン12を補充する治療が行われます。
亜鉛欠乏
亜鉛は私たちの体にとって欠かせないミネラルの1つです。亜鉛が不足すると舌が痛くなったり、味覚を感じにくくなったりすることがあります。また、舌の傷が治りにくくなることもあります。
亜鉛欠乏に対しては、亜鉛サプリメントの摂取や薬の服用を行い、症状を改善させます。
シェーグレン症候群
シェーグレン症候群は、厚生労働省の指定難病の1つで、原因不明の自己免疫疾患です。唾液腺や涙腺などが、自分の免疫システムによって破壊されてしまい、唾液や涙の分泌が極端に少なくなります。
唾液が少なくなると口腔内の乾燥を引き起こし、舌が乾燥して痛みを感じたり、味覚が変化したりすることがあります。また、口の中が乾燥すると細菌が繁殖しやすくなり、虫歯のリスクが高まるため注意が必要です。
シェーグレン症候群には根本的な治療法がないため、対処としては人工唾液や人工涙液の使用など、症状の緩和が行われます。
全身的な疾患以外で舌の痛みを引き起こす原因は?
全身的な疾患が原因となって舌が痛む場合についてお話ししてきましたが、冒頭でも触れた口内炎や火傷など、舌の痛みには、ある場所に生じる症状が原因となる場合もあります。
口内炎や火傷などであれば、数日から長くても数週間で治ることが一般的です。しかし、それ以上に続く場合は、以下でお話しするような別の理由によって、舌が痛くなっていることも考えられます。
カンジダ症などの感染症
一つの原因は感染症です。感染症の代表的なものとしては、カンジダ症が挙げられるでしょう。カンジダ菌はカビの一種で、私たちのお口の中にも常在しているのですが、カンジダ症を発症すると舌が白っぽくなったり、痛みを感じたりすることがあります。
カンジダ菌自体は珍しいものではありませんが、抵抗力が落ちた高齢者の方や、全身疾患によって免疫力が落ちた方は、カンジダ症を発症しやすくなる傾向があり、対処としては、抗真菌薬を使用した治療を行うのが一般的です。順調に回復すれば、1週間程度で治癒します。
合わない入れ歯や被せ物による刺激
意外に思われるかもしれませんが、歯の状態を良くするための治療によっても、舌が痛くなるケースがあるのです。もちろん、適切な治療を行っていれば問題は生じませんが、入れ歯や被せ物が合っていない場合、舌に擦れて、痛みを伴うことがあり、さらに慢性的な刺激が加わると、口内炎ができることもあります。
この場合は口腔内の状態をしっかりと検査し、入れ歯の調整を行ったり、被せ物を作り直す必要があります。他院で治療を受けた方でも、ご自身の入れ歯や被せ物が合っていないとお感じになる方は、お気軽にポラリス歯科・矯正歯科にご相談ください。
神経痛
舌の痛みは、神経の異常によって起こることもあります。舌には三叉神経(さんさしんけい)、舌咽神経(ぜついんしんけい)など、いくつかの脳神経が関わっており、これらの神経に障害が起こると、舌に痛みが出ることがあります。
ただし、神経痛のため、一般的には舌の形態などに異常はありません。対処法としては、薬物療法のほか、神経やその周辺に麻酔薬を注入して痛みをとる神経ブロック療法などが挙げられます。
舌痛症(ぜっつうしょう)
舌痛症とは、舌の痛みがあるのにもかかわらず、検査をしても明らかな異常が見つからない状態を指します。異常がないため原因が特定できず、治療が難航するのが厄介なところです。
舌痛症の原因ははっきりと解明されていませんが、ストレスや不安など、何かしらの精神的な要因が関係していると考えられており、対処法としては、抗うつ剤の使用やカウンセリングなどが行われます。
悪性腫瘍(舌がん)
舌の痛みが治らないと、悪性腫瘍(舌がん)ではないかと不安になる方が多いかもしれません。悪性腫瘍の場合には、見た目や形、色が正常な組織と比べて大きく変わっていることが多くなります。
舌の赤みや白斑、しこり、口内炎などが数週間経っても治らない場合や、病変部位が大きくなるようなことがあれば、すぐに歯科や口腔外科を受診しましょう。
舌の痛みは放置せず、早めに歯科医院に相談を
今回は、舌の痛みの様々な原因について解説しました。舌の痛みはどれか一つで発症することもあれば、いくつかの原因が絡んでいることもあります。舌の痛みについて不安を感じることがある方や、舌の痛みが治りにくい場合は、一度歯科医院で相談してみましょう。
ポラリス歯科・矯正歯科には、医療法人社団 千仁会に所属する各分野の専門医が多く在籍しています。舌の痛みについても丁寧にお話を伺い、原因を特定して適切な治療法をご提案いたしますので、舌が痛い時は我慢せずに、ポラリス歯科・矯正歯科にお気軽にご相談ください。