歯の治療全般
歯茎が腫れて痛い ~その原因と治療法~
日々多くの患者さんがポラリス歯科・矯正歯科を訪れてくださっています。虫歯治療や矯正治療、ホワイトニングなど、様々な治療のためにご来院くださる患者さんが多い中で、「歯茎が腫れている」や「歯茎が痛む」といったお悩みを抱える方も多くいらっしゃいます。
歯そのものとは異なる歯茎ですが、歯を支える大切な組織であり、適切なケアをすることが求められます。そんな歯茎が腫れる原因は様々で、病気が原因であることもあり、注意が必要なケースもあります。そこで今回は、歯茎が腫れる原因やその治療法について解説していきましょう。
歯茎の構造
歯茎が腫れる原因を理解する前に、まず、歯茎や歯の構造についてお話しします。歯の周辺には様々な組織がありますが、今回のテーマで注目していただきたいのは歯茎(歯肉)と歯槽骨です。
歯茎=歯肉
歯茎は専門的には歯肉(しにく)と呼ばれます。歯肉の役割は様々ですが、歯肉の下に存在する骨を感染から守る役割も担っています。歯肉の表面には皮膚と同じような上皮成分があり、その下にコラーゲン線維を主とする結合組織と呼ばれるものがあります。
歯槽骨
歯茎は歯槽骨と呼ばれる、歯が埋まっている骨の上に植立しています。健康な歯肉が存在するためには、健康な歯槽骨の存在が欠かせません。歯槽骨は歯を支える土台とも言うべき重要な存在です。
上の図のとおり、歯の周りの組織はこの他にもありますが、特に歯茎の腫れや痛みに関係するものがご紹介した二つの組織です。
歯茎が腫れたり痛んだりする原因は?
歯茎が腫れたり痛むのは、歯肉やその周囲組織に炎症反応が起きているからです。では、その炎症反応を起こす原因についてお話ししていきましょう。
歯周病
歯茎が腫れて痛む原因で最も多いのが歯周病です。これまで歯周病のコラムでもお伝えしてきたように、歯周病は、日本の成人の8割の人がかかっていると言われるほど厄介な病気で、もはや国民病と言えるでしょう。
歯周病になるのは、歯茎の溝の中(歯周ポケット)に溜まるプラーク(歯垢)が原因です。プラークはジンジバリス菌などの歯周病菌の塊であり、これが周囲に炎症を起こします。
歯周病は炎症が歯茎だけにとどまっている歯肉炎と、歯茎だけでなく周りの歯周組織にまで波及してしまった歯周炎がありますが、いずれの状態でも歯茎に炎症が起きていることに変わりはありません。詳しくは、歯肉炎と歯周炎って何が違うの?のコラムで解説しておりますので、興味のある方は、併せてご参照ください。
大きな虫歯
もう一つ、歯肉が腫れたり、痛む原因として挙げられるものが、大きくなってしまった虫歯です。虫歯は、ミュータンス菌などの虫歯菌が、お口の中の糖分から酸を作り出し、歯が溶けていく病気です。通常の治療であれば虫歯に感染した部分を削り、詰め物や被せ物をすることが一般的です。
しかし、虫歯は進行して神経にまで及んでしまうことがあり、最終的には神経が壊死してしまい、根管(こんかん:歯の根っこの部分)の先端に膿の袋を作ることがあります。
膿の袋は骨の中にありますが、それが出口を求めて骨を溶かし、歯肉と骨の隙間に膿が溜まってしまうと歯肉が腫れてしまいます。
智歯周囲炎(親知らず)
智歯周囲炎(ちししゅういえん)とは、親知らず(第三大臼歯・智歯)周囲の歯肉の炎症のことです。現代人の顎の骨は小さくなり、親知らずが真っすぐ生える方は3割程度とも言われます。
親知らずは一番奥の歯であり、さらに親知らずが斜めに生えてきたり、親知らずが歯肉に埋まっているケースも多いので、歯ブラシが届きにくく、清潔に保つのが難しい部分です。そのため、親知らず周辺には汚れが溜まりやすくなり、炎症も起きやすくなってしまうのです。
口内炎
口内炎が歯肉にできると、そこに炎症が起き、歯茎が腫れて痛むようになります。ストレスや過労などで身体の免疫力が落ちた時に、口内炎ができてしまうという方も多いでしょう。
口内炎にも種類があり、白っぽい色をしているのがアフタ口内炎、赤い斑点のようなものができ、ただれる症状のものをカタル性口内炎といいます。入れ歯や矯正器具が上手くフィットせず、歯肉に当たってしまうと、そこで細菌の増殖が起き、カタル性口内炎の原因になります。
他にも、ヘルペスやカンジダなどのウイルスが原因となるウイルス性口内炎、食べ物や歯の詰め物(金属等)に対するアレルギーが原因となるアレルギー性口内炎などもあります。
歯根破折
歯肉に埋まっている部分の歯が欠けたり折れたりしてしまうことを歯根破折(しこんはせつ)といいます。歯根破折が起きると、そこに細菌が入り込み、炎症が起きて歯茎が腫れることがあります。
根管治療で神経を抜いている歯や、歯ぎしりの癖があり、過剰な力が掛かっている歯には、歯根破折が起こりやすくなるので、注意してください。
骨隆起
歯茎に炎症や膿がたまっていなくても、歯茎の下にある骨が膨れてしまうと、歯茎が盛り上がってしまい、腫れたように感じます。これを骨隆起(こつりゅうき)といいます。
骨隆起は細菌感染を起こしているわけではなく、歯ぎしりや噛む力に抵抗するために、骨が強くなろうとして厚くなったものです。特徴としては、指や舌で触るとツルツルして硬く、痛みもないため、自覚症状を伴わないケースが多いことが挙げられるでしょう。
骨隆起は、上記のように歯ぎしりや食いしばり癖のある方のほか、歯周病が進行して歯槽骨が吸収されてしまった場合や、親知らずが骨の中に埋まっている場合などに見受けられることが多い症状です。
薬物性歯肉肥大、その他の病気
薬物性歯肉肥大(やくぶつせいしにくひだい)は、薬物性歯肉増殖とも呼ばれ、薬の副作用により、歯肉が腫れる症状をいいます。薬物性歯肉肥大を起こしやすい薬としては、抗てんかん薬のフェニトイン、カルシウム拮抗薬(血圧を下げる薬)のニフェジピンなどが挙げられます。
また、以前のコラムでご紹介した、細菌感染によって歯茎にできものができるフィステルや、数は多くありませんが、歯茎にもがんができることがあり、それによって歯肉が腫れるケースもあります。
日常的な症状から様々な病気まで隠れている可能性のあるものが、今回のテーマである「歯茎の腫れ」です。気になる方はぜひ歯科医院でご相談ください。
歯茎の腫れや痛みに対する治療法
歯周病の治療
歯周病が原因の場合は、歯科医院での歯周病治療が必要です。中でも、歯茎の中に付着した歯石の除去やプラークコントロールが欠かせません。歯茎の炎症が改善すれば、歯茎の腫れは軽減していきます。
歯周病を防ぐために大切なのは、セルフケアにより日常の正しい歯磨きを欠かさないことと、定期的に歯科医院を受診し、予防や歯のメンテナンスのためにPMTC(プロフェッショナル・メカニカル・トゥース・クリーニング)などのプロフェッショナルケアを受けることです。
間違った歯磨きの方法が、歯肉が腫れる原因にもなります。歯科医院では、プラークコントロールを中心とした歯磨き指導(TBI)も受けられますので、歯科衛生士から正しい歯磨き方法を学びましょう。
虫歯の治療
虫歯もまた、歯科医院で適切な虫歯治療を行って対処しますが、前述の根っこの先端に膿の袋を作っている状態では根管治療(歯の根の治療)が必要になります。
適切な治療を進め、根管の中を無菌状態にすれば、膿が消失し、歯茎の腫れも落ち着いてきます。早めに処置を行わないと次第に進行してしまうので、すぐに治療をすることが大切です。根管治療については、下記の各コラムでも詳しく解説しておりますので、併せてご参照ください。
親知らず治療
智歯周囲炎については、親知らず治療を行います。ポラリス歯科・矯正歯科では、通常のレントゲンではなく、3次元歯科用CTで撮影し、親知らずの位置を的確に把握したうえで、治療にあたります。医療法人社団 千仁会の専門医が多く在籍しておりますので、難易度が高く、他院では対処が難しいと言われた患者さんも、安心してご相談ください。
骨の形を整える
骨隆起により、骨の厚みが厚くなってしまっている状態では、プラークコントロールや根管治療では改善しません。厚くなった骨や形がいびつになってしまった骨に対し、正しい形状へと整える手術をする必要があります。
その他の症状への対処
口内炎に対しては、薬(抗菌剤や塗り薬等)を処方するケースが一般的です。歯根破折の場合は、損傷した歯を元通りに戻すことは難しいため、抜歯せざるを得ないことも多くなります。また、薬物が原因の場合は、担当医と連携し、治療にあたることを考えていきます。
このように、歯茎の腫れの原因ごとに治療法が異なります。ただ、正しい治療を行えば、改善する場合がほとんどです。原因の追究を行うためにも、歯科医院で一度詳しく見てもらいましょう。
歯茎の腫れや痛みは放置せず、早めに歯科医院の受診を
今回は歯茎の腫れや痛みについて、その原因と治療法をご紹介しました。歯茎の炎症には様々な原因が隠れていることもあると、ご理解いただけたのではないでしょうか。
たとえ小さなことであっても、気になることはかかりつけの歯科医院で相談してみましょう。ポラリス歯科・矯正歯科では、患者さん一人一人に最適なお口のトータルケアをご提供いたします。歯茎の腫れや痛みが気になる方や、しっかりと相談できる歯科医院を札幌でお探しの方は、ポラリス歯科・矯正歯科に、お気軽にご連絡ください。