種類によって特徴は様々?ハクジラの歯

種類によって特徴は様々?ハクジラの歯
 

最近は少し専門的な内容のコラムが続きましたね。そこで今回は、違う分野にフォーカスし、人間以外の歯について触れてみたいと思います。

 

以前、常に何かをかじっているネズミの歯はどうなっているの?のコラムで、ネズミの歯についてお話ししましたが、人間以外の生物にも、物を食べるために歯を持つ生物はたくさんいます。今回はクジラの歯について取り上げてみましょう。

 

ただ、クジラには歯があるハクジラと、歯がないヒゲクジラがいます。クジラは80種類以上もいますが、ヒゲクジラ(ミンククジラやナガスクジラなど)は、歯の代わりにクジラヒゲという板状に重なった櫛(くし)のような器官があるのが特徴で、10種類程度しかいません。大半がハクジラに分類されます。

 

そこで以降では、歯を持つハクジラについてお話ししていきます。

ハクジラの歯とは?

歯クジラの歯の種類
 

ハクジラの歯は、私たち人間の歯のように、食べ物を噛んだり、ちぎったり、潰したりするような形になっていません。ハクジラの歯の多くは、獲物が逃げないように引っ掛けるのに適した円錐形をしており、基本的にほとんど同じ形です。これを同形歯といいます。

 

ただ、本数はとても多く、40本以上もあります。また、常に何かをかじっているネズミの歯はどうなっているの?のコラムでも触れたとおり、人間の歯は乳歯から永久歯に生え変わるので、二生歯性(にせいしせい)ですが、ハクジラの歯は、一度生えた歯が生え変わることのない一生歯性(いっせいしせい)なのも特徴です。

 

このため、ハクジラの歯を輪切りにすると木の年輪のような模様が現れ、そこから木と同じように年齢を推定することができます。

ハクジラの例と各々の歯の特徴

前述のとおり、ハクジラの仲間はとても多く、歯にもそれぞれに特徴があります。

バンドウイルカ

バンドウイルカの歯
 

クジラと言っているのにイルカが出てくるのを不思議に思われた方も多いでしょう。実はクジラ目に属する生物の中で、体長が4メートル以上のものをクジラ、4メートル未満のものをイルカと分類するんですね。バンドウイルカも、厳密な分類では、クジラ目ハクジラ亜目マイルカ科ハンドウイルカ属となります。

 

バンドウイルカといえば、水族館でショーをしている姿が印象的ではないでしょうか。頭も良くて、可愛らしさもあるバンドウイルカですが、その歯は上顎下顎で合計80本です。

 

また、水族館のイルカショーで、飼育員さんがイルカに魚を与えているところを見たことのある方もいらっしゃるでしょう。よく見ると、バンドウイルカは魚を噛むことなく丸飲みしています。

 

バンドウイルカの歯は、人間の歯のように噛み合わせるようにはなっておらず、先ほどお伝えした歯クジラの歯の特徴どおり、獲物が逃げないような形になっています。

 

ちなみに、イルカの歯の本数も種類によって様々で、最も多いカマイルカでは上顎と下顎を合わせると120本ほどになります。反対に、最も少ないのがハナゴンドウで、上顎には歯がなく、下顎に4〜14本ほどの歯があるだけです。

オキゴンドウ

オキゴンドウの歯
 

オキゴンドウもイルカの仲間ですが、比較的大きい部類に入ります。大きな個体は体長が5~6mにもなります。

 

このオキゴンドウは、バンドウイルカなどとは異なり、大きな魚や他のイルカ、小さなクジラまで食べるので、シャチモドキなどとも呼ばれます。このため、オキゴンドウの歯は、一般的なハクジラの歯と異なり、かじりついて引き裂きやすい形をしているのが特徴です。

イッカク

イッカクの歯
 

イッカクは北極海とその周辺に住んでいるハクジラです。全長は3メートルほどあり、中には10キロなる個体もいます。そんなイッカクの特徴は、オスにのみ1本だけ特に長い牙がある点でしょう。

 

実は、イッカクの歯は上顎に2本の前歯があるだけなのですが、このオスの牙は、前歯のうちの1本だけが特に長くなったものであり、驚くことに、上顎を貫通して外に出ています。

 

特徴的なこの牙(前歯)は、内部が空洞になっているため、見た目と違ってとても脆く、折れやすいのです。なお、メスにはこれほど長い牙はありません。

マッコウクジラ

マッコウクジラの歯
 

マッコウクジラの歯は、基本的に下顎にだけ存在します。本数は40~50本ほどあり、いずれの歯も円錐形です。

 

驚くのはその大きさで、なんと歯1本が1キロもの重量があります。マッコウクジラは、ハクジラの中で最も巨大なクジラで、大きいものでは全長20メートル以上、体重50トン以上の個体もいるほどですから、歯も大きくなるんですね。

 

マッコウクジラの上顎には歯がないのですが、粘膜の中にはあるようで、ごく稀に出ている個体が見つかります。ただ、上顎に歯がない理由はよく分かっていません。

 

マッコウクジラの主食はイカ類ですが、その巨体ゆえに、ダイオウイカなどの深海の巨大な生物を捕食し、噛むことなく丸飲みしていると考えられています。

シャチ

シャチの歯
 

シャチもまた水族館などで目にすることがあるかもしれませんが、自然界のシャチは「海のギャング」とも呼ばれています。肉食のハクジラで、獰猛でありながら知能も高く、海の食物連鎖では頂点に君臨します。

 

一般的なハクジラの歯と異なり、シャチの歯は大型の生物を捕食するために、獲物を引き裂き、飲み込みやすい大きさに刻むのに適した形をしているのが特徴です。

 

さらにシャチの歯は、長さが10〜15センチもあり、それが上顎と下顎で44〜48本も生えています。捕食対象は、小さなものでは魚やイカ、ペンギン、大きなものではアザラシ、イルカ、ホッキョクグマ、サメ、他のハクジラやシロナガスクジラなどの大型のヒゲクジラに至るまで、多岐にわたります。

 

円錐状の同形歯が多いハクジラの中で、シャチの歯は、人間の歯のように食べ物を嚙みやすい形になっているのは注目すべき点と言えます。

ハクジラの歯に注目すると興味深い発見も

ハクジラの歯に注目すると興味深い発見も
 

今回は、歯を持つクジラ、ハクジラの歯についてご紹介しました。基本的に、ハクジラの歯は人間の歯のようにはなっておらず、獲物が逃げないようにするシンプルな形をしています。

 

ただ、ハクジラの種類によっては差が大きく、歯の本数や形には各々特徴があります。いずれのハクジラも、捕食する対象に合わせた形に歯が進化したのです。

 

今回挙げた全てのハクジラの歯を見る機会はなかなかないと思いますが、バンドウイルカやシャチの歯であれば、水族館のショーで見ることもできますので、機会があれば一度よくご覧になってみてください。

 
人間の歯も、私たちが食物を食べるために一番適した形に進化してきました。
 

今回のコラムを参考にしていただけたら、様々なハクジラも、それぞれの生態に一番適した「歯」を持っていることがお分かりいただけると思います。

 

もちろん人間の歯も、私たちが食物を食べるために一番適した形に進化してきました。そんな大切な歯を守るためにも、もし歯について何かお困りごとがあれば、ポラリス歯科・矯正歯科にお気軽にご相談ください。